米財務省は、中国の「為替操作国」指定を解除した。
米中が15日に署名する「第1段階」の貿易合意で、中国が人民元の切り下げを自制するとの拘束力の強い約束をしたこと前向きに評価し、為替操作国より問題が深刻でない「監視対象」に改めた。
これは一見すると、米中融和の第一歩に思えるかもしれない。
だが、話はそんなに簡単ではなく、実際には逆に中国に対して強いプレッシャーをかけるものとなっている。
中国経済は今間違いなく破綻に向かって動いている。
それを典型的に示したのが、昨年11月の天津物産集団のドル建て社債のデフォルト(債務不履行)である。
返済期限の来た12億5000万ドル(1400億円ほど)のドル建て社債の返済ができなかったのだ。
天津物産集団は天津市が所有する公有企業で、2018年にはアメリカの経済誌フォーチュンが発表するグローバル企業500社の132位にランクされた、中国を代表する巨大企業だ。
仮にどんな経営状態になったとしても、この会社のドル建て社債は中国政府のメンツにかけて絶対にデフォルトさせないと見られていた。
すなわち、ドル建て社債は一般に外国人が購入しているものであり、天津物産集団は中国を代表する公有企業であるので、デフォルトさせれば中国の国家の信用度に直接大きな傷をつけることになる。
そうなると、今後中国企業がドル建てで借り入れを行おうとしても、天津物産集団のようなことがあってはたまらないと投資家は判断することになるから、極めて難しくなることになる。
そんな事態は何としてでも避けたいと、当然中国政府は考えるはずだと誰もが思っていた。
天津物産集団はそもそも公有企業であるので、どんなに資金繰りがおかしくなっても政府が支援を決めれば、いくらでも支援ができる状態にある。
ところが、意外にもデフォルトに陥ったのだ。
これは、もはやメンツなんかにこだわっていられない段階まで中国経済が追い込まれているか、中国の経済政策の統制が十分に取れなくなっていることを意味する。
さて、この状態を前提にして、中国の為替操作国からの指定解除を考えてみよう。
中国が崩壊する自国の経済を支えようとするならば、人民元を大量に発行して、苦しんでいる個人や企業に手当するしかない。
全く助けないで放置するなんてことをすれば、それはそのまま体制崩壊の危機につながる。
ところが人民元の大量発行は、需要と供給の関係から、必然的に人民元の通貨価値を引き下げることになる。
そして、人民元を大量発行することで企業を救おうとするような行動は、アメリカの側から見れば「為替操作」だと受け取ることができる。
すなわち、人民元を大量発行すれば人民元の価値の切り下げにつながるのは当然で、中国政府はそれを十分に理解しながら意図的に行ったものだと判定することができる。
そうすると、アメリカは中国を信頼して為替操作国の指定を解除してやったのに、中国はアメリカのこの善意を裏切って、為替操作を堂々と行ったのだと非難することができるようになる。
こうなると、アメリカはこれを中国にこれまで以上に強力な制裁を科す口実にできるわけだ。
一旦為替操作国指定から外したことで、次のインパクトをずっと大きなものにすることができる。
この話を中国の人権問題や不当な企業支援や知的財産権の侵害と結びつけることで、アメリカはアメリカ単独での制裁から西側諸国全体での制裁にレベルアップさせることを考えるであろう。
アメリカとしても、従来の制裁からさらにレベルを引き上げた制裁に引き上げる口実になるであろう。
このように見た場合には、今回の為替操作国指定からの解除は、将来の中国に対する締め付け強化のための準備処置なのだと考えるべきではないだろうか。
いやはや、トランプ政権はなかなか狡猾だと感じる。
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これのネタ元の産経新聞の記事
https://www.sankei.com/world/news/200114/wor2001140003-n1.html
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