中国

「エイズの責任をアメリカは取ったのか?」 中国外交部の異常な「反論」! (朝香 豊)


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中国外交部の耿爽副報道局長は、アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスの拡散に関して、「中国政府に故意の責任があれば、(相応の)結果を招く」と、中国政府の責任を問う構えを見せたことに対し、「エイズは最初に米国で発見されたが、米国に責任を追及した者はいるのか」と反論した。

おいおい。

エイズは最初にアメリカで問題にされたのは事実だが、アメリカが起源だというわけではない。

チンパンジーが持つSIV(サル免疫不全ウイルス)が人に感染して変性したのがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)であり、起源はアフリカのコンゴあたりだと考えられている。

アメリカで発見され、人間社会で問題になったのは1980年代に入ってからだが、遺伝子解析の結果として、チンパンジーからヒトに最初に感染したのは1908年頃ではないかと推計されている。

新型コロナウイルスの場合には、東シナ海上の島(浙江省舟山市)に生息するキクガシラコウモリが保有するSARS系のウイルスが起源であることはほぼ間違いないとされていて、このキクガシラコウモリのSARS系ウイルスを武漢ウイルス研究所が研究対象にし、論文なども出していたことがわかっている。

ちなみに、武漢海鮮市場では確かに野生生物の肉が販売されていたが、コウモリは扱っていなかったこともわかっている。

また、当初の感染者には武漢海鮮市場とは関わりを持っていなかった人の方がずっと多かった。

こうした状況証拠から見ても、今回の新型コロナウイルスは武漢ウイルス研究所が起源であると推定するのが当然ではないか。

厳重な管理が求められる研究施設でその管理ができなかったということであれば、ウイルスの漏洩が過失であっても、その責任は免れないだろう。

そもそも世界が中国に腹を立てているのは、新型コロナウイルスが中国起源だったからとか、中国で最初に見つかったからではない。

11月には患者が発生し、少なくとも12月には「人から人への感染」があることを中国自身が十分に理解して、入院患者を隔離扱いしながらも、この事実を隠し続けてきたからだ。

WHOの規則では、SARS系の感染症が発覚した場合には、24時間以内にWHOに通報しなければならないことになっているが、中国はこのような国際ルールを完全に無視した。

そしてそれにより、中国国内だけでなく、全世界に厄介な感染を広げてしまった。

感染者数や死亡者数なども完全にウソをついていた。

同一人口あたりの感染者数で見ると、日本よりも中国の方が少なかったことになってしまう。

同一人口あたりの死者数で見ても、日本よりも中国の方が若干多かったくらいで、ほぼ同じになってしまうのだ。

それがいくらなんでもありえないということは、誰でも理解できるだろう。

そして、研究者が発表する国際論文とこうしたウソとの矛盾を減らすために、論文の公表前に政府のチェックが入るようになっていたこともわかっている。

中国から流される情報によって、この病気が割と軽いものだと世界の医療関係者が誤認したことが、各国の初期対応を遅らせ、結果的に大きな被害を世界中にもたらしたのだ。

中国の公式情報が間違っていることを知らせようとする、良心的な人たちによるわずかな動きにも、中国政府は敏感な反応を示し、弾圧を加えてきた。

中国による情報隠蔽やニセ情報の拡散がなければ、世界がこんなに大きな被害を受けずに済んだのは確実ではないか。

さて、耿爽副報道局長は、2009年に拡散した新型インフルエンザについても、「アメリカは誰かに賠償したのか」と述べている。

あの新型インフルエンザは豚インフルエンザ系で、発生したのはアメリカではなく、メキシコだ。

そんなことは十分に理解しながら、わざと混同させようとしているところに、中国の悪意を強く感じる。

それはともかく、メキシコの養豚の不衛生なあり方に問題があったのは事実としても、メキシコはこの新型インフルエンザが発生した時に、すぐさま国際社会に連絡した。

情報の隠蔽をしたり、ニセ情報を流したりといった行動は取っていない。

中国の悪意のある対応とは、まるで違うのだ。

中国が当初から正しく情報を開示していたなら、武漢の研究所から漏れたものだとしても、損害賠償という話にはならなかっただろう。

中国が情報を開示しなかったどころか、ニセ情報を流すことで、世界にとてつもない被害を与えたことが、問題にされているわけだ。

論点ずらしを行って、自己正当化を図り、それどころか自己を英雄化するようなことまでやれば、世界の中国に対する見方がさらに厳しくなることを、中国は理解すべきだ。

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