現在アメリカは債務上限問題に直面している。債務上限問題とは、政府債務が議会の決めた上限枠に到達し、議会が上限枠を引き上げないとこれ以上債務を増やせなくなっているという問題だ。しかも現在政府内にあるお金も10月18日には底をつくことになると、イエレン財務長官が警告するほど切迫しているのである。
債務上限問題はアメリカでは珍しいことではなく、これまでも上限が近づけば何度も引き上げられてきた。だから今回も大したことにはならないだろうと思われていたのだが、現在審議中の法案のことと絡んで予断を許さない事態に陥ってきている。
現在アメリカにはインフレが襲ってきている。日本の「百均」の元祖となった「1ドルショップ」がアメリカにはあるが、「1ドルショップ」の商品の販売価格が1.1ドルとか、場合によっては1.5ドルとかになってきている。こうした価格上昇は庶民生活を苦しめている。
こうなると政府はインフレの加速につながらないように、財政政策を引き締め気味に対応すべきということになる。だがアメリカでは現在、とてつもないバラマキ法案が審議されていて、共和党はとてもではないがこれを飲むことができないのである。
このバラマキ法案は「3.5兆ドル法案」と呼ばれ、民主党内の左翼陣営が強力にプッシュしているものである。年間39兆円ほどのバラマキを10年間にわたって行おうというものなので、今こんなものをやったらインフレを加速させ、アメリカ経済はとんでもない状態になってしまう。
現在でも米ドルの金利は上昇を示し、高くなったこの金利に引き寄せられて世界中のお金が米ドルに向かいつつある。そこにこんなものが通過して、米ドル金利がさらに引き上げられるようなことになれば、それはまさに世界経済を崩壊させかねないくらいの破壊力を持つ。
さて、現在アメリカでは上院も下院もホワイトハウスも民主党が押さえている。だったら民主党がゴリ押しすれば法案を通すのは難しくないんじゃないかと思うかもしれない。ところが、上院民主党のマンチン議員とシネマ議員がこのバラマキ法案に強力に反対しており、民主党だけでは上院の多数派を握れない状況になっているのである。
さらに厄介なのは、アメリカではこの「3.5兆ドル法案」と並んで1.5兆ドルのインフラ整備法案が出されており、こちらはマンチン議員とシネマ議員は賛同しており、すでに上院は通過して下院の採決を待つばかりになっていることだ。
これの何が厄介かと言えば、民主党左派からすれば、こんなインフラ法案よりも「3.5兆ドル法案」の方がずっと大切であるから、「3.5兆ドル法案」が通過するまではインフラ法案を棚ざらしにする方針なのである。
つまり民主党左派は、「3.5兆ドル法案」を通過させた上でさらに1.5兆ドルのインフラ整備法案も通過させようということなのであり、両方とも通ると年間55兆円、10年で550兆円の追加財政支出を認めることになってしまうのである。
このタイミングでは債務の上限撤廃に共和党が応じることはできない。それゆえに政府の財政破綻が発生しかねない状況となっているのである。
現在の状況で望ましい着地点は、「3.5兆ドル法案」を民主党が撤回し、その代わりに共和党が債務の上限撤廃に応じ、1.5兆ドルのインフラ整備法案をすんなり通すというものだが、民主党左派の強硬な姿勢からすると、これがなかなかうまく行きそうにない状態なのだ。
中国経済の崩壊だけでなく、このアメリカの状況によって、世界経済はとんでもないことになりかねない入口に差し掛かっている。
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バイデン大統領の画像
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