Jewish World Watchなど19の人権団体が、フォルクスワーゲンはウイグルに設立した工場を閉鎖して、ウイグルの強制労働の使用を停止しなければならないとするメッセージを発表した。フォルクスワーゲンは1937年にナチスによって作られた企業だが、過去の負の歴史の埋め合わせをするのではなく、むしろ過去の過ちを繰り返していると、こうした団体は非難している。
ここで言う「過去の負の歴史」とは、ナチスに由来する出自の話ばかりではない。たとえばフォルクスワーゲンは1964年から1985年まで続いたブラジルの軍事独裁政権を支える役割も果たしてきた。軍事独裁政権に反対して行動する組合活動家たちを特定して政権側に引き渡し、独裁政権による拷問に晒させたことの罪を問われて、その補償金などとして600万ドルの支払いをさせられたこともある。こうした反倫理的な行動に手を染めやすい傾向がフォルクスワーゲンにはもともとあるということも、これらの人権団体は主張している。
そもそもウイグルには部品工場や港が近くにあるわけではなく、部品調達においても製品輸出においても非常に不利な環境にある。なぜこのような場所にわざわざフォルクスワーゲンが工場を建てたのかは、普通の経済合理性から考えれば完全な謎である。中国政府から法外な補助金を大量に得ているか、ウイグル人にほとんど賃金を支払わないで強制労働をさせているか、どちらかしか考えられない。いずれにせよ、この一件もフォルクスワーゲンの企業倫理が大いに問われる事態である。
フォルクスワーゲンは自社で製造していたディーゼル車の排ガスについて、ソフトウェアの改ざんによってごまかしていたことが2015年に発覚して大問題になった。いわゆるディーゼル・ゲート事件だが、これに関わる損害賠償などの巨大な負担がフォルクスワーゲンに加わるようになり、財務的に苦しくなった。この弱みを中国政府にうまく利用された可能性は大いにありうるところだ。メルケル・ドイツの中国接近も、こうした背景があることが推測される。
現在フォルクスワーゲンの契約上の義務として、中国の国家情報法に基づき、中国政府の諜報活動を支援、協力しなけばならないことになっている。ウイグルでの生産活動を行う場合には、ウイグルの工場で得られた監視画像データ、音声データを提供することにつながり、それはウイグルでのジェノサイドを含む各種の人権抑圧に加担することにもなる。ウイグルでの強制労働やジェノサイドから距離を置こうとする一般的な西側企業の流れとは逆行する動きを、フォルクスワーゲンは見せていることになる。
アメリカの消費者はウイグルでのジェノサイド行為で中国共産党に手を貸す企業を揺さぶることができるのであるから、ジェノサイドに加担していない企業の商品を求めるべきだと、人権団体は訴えている。
この話がはっきり表に出てくるとフォルクスワーゲンの致命傷になりかねないが、それがアメリカの人権団体から声として上がるようになってきたところは注目したい。なお、ヨーロッパの人権団体も同様の懸念をフォルクスワーゲンに向けてきている。
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フォルクスワーゲンと習近平の画像
https://img.republicworld.com/republic-prod/stories/promolarge/xxhdpi/nycg1mwxmbtku3zm_1605249805.jpeg?tr=w-758,h-433
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