ウイグルでのジェノサイドが問題になっている中で、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が新たな証拠を見つけ出した。中国政府が3月に公表したデータに基づき、ウイグルでの出生率が2017年から2019年にかけてというごく短期間にほぼ半減していること(48.74%のマイナス)を明らかにしたのである。この落ち込みは1975年から1979年の4年間でのカンボジアのポルポト政権時の落ち込みの2倍以上に相当するという。つまり、残虐ぶりで世界的に知られるようになったポルポト政権が4年かけて落ち込ませた出生率の低下の2倍以上の落ち込みを、半分の期間の2年で達成していることになる。このあり方は中国も署名している「ジェノサイド犯罪の防止と処罰に関する条約」(ジェノサイド条約)にも違反するものだとしている。
ウイグルでは「穏当なレベルにまで出生率を引き下げて安定させる」との目的から「違法出産」に対して「強く対処する」キャンペーンが行われた。未だに漢民族の比重の小さいウイグルの南部地域では特に厳しく、人口1000人あたりの出生率を少なくとも4人分引き下げることが目指された。出生率を88.6%減らすことが目標とされた地域もある。「違法出産」の情報提供に対して500人民元(8000円)の報酬を与えるホットラインを用意した地域もある。南部の4つの県では出生率は平均で2018年に35.7%のマイナス、2019年には56.6%のマイナスとなっている。こうした出生抑制策と同時に、漢民族の入植を強力に推し進める政策も実行されている。移住者には土地と仕事が与えられるだけでなく、引っ越しに要する費用を負担せずにすみ、医療費は無料で、教育給付や住宅扶助も与えられる。2万人民元(36万円)のボーナス特典もある。子供や親も引き連れて移住すると、さらに2万人民元のボーナスがもらえる。
こうした政策目標を実現するために、巨額の罰金を科したり、懲戒処分を下したり、法定手続きによらずに強制収容所に入れたり、強制収容所に入れるぞと脅したりといった様々な手段が使われてきた。妊娠可能な年齢の女性たちのもとには毎月訪問があり、3ヶ月に1度は妊娠検査がある。こうして妊娠初期の女性を見つけ出して堕胎させることも行われている。妊娠可能な年齢の女性たちに卵管結紮手術を行ったり、避妊リングを装着させたりといったことも行われている。
こうしたあり方は中国の他の地域では一人っ子政策の放棄によって、出産規制が緩められているのとは全く真逆の動きだ。中国の中央銀行である中国人民銀行は、先進国の少子高齢化が深刻な問題を引き起こしてきたことを指摘しながら、中国はこうした先進国よりもさらに厳しい状況に陥る見通しにあることを率直に指摘し、一家族あたり最低3人の子供を産ませることを目標に、強力な出産奨励策を実施する必要性を訴えているのとは正反対である。
こうした事実を突きつけられると、ウイグルでの人口抑制策が我々の想像を絶するレベルにあることが理解できるであろう。
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ASPIのレポート
https://s3-ap-southeast-2.amazonaws.com/ad-aspi/2021-05/Family%20deplanning%20v2.pdf?IO4rxtbW_Up5C6usSJ4EpMFHm6khL7uF
www.reuters.comの記事
https://www.reuters.com/world/china/china-uses-coercive-policies-xinjiang-drive-down-uyghur-birth-rates-think-tank-2021-05-13/
ウイグルの子どもたちの画像
https://ichef.bbci.co.uk/news/976/cpsprodpb/776C/production/_107727503_comp_morekids.jpg
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