現在韓国では、言論の自由、報道の自由が完全に潰されかねない深刻な事態が進展している。与党・共に民主党が「言論仲裁法改正案」を推進し、今月の25日に国会で成立させようと動いているからだ。既に7月27日に委員会採決を強行突破している。
「言論仲裁法改正案」は「言論懲罰法」とも呼ばれ、「虚偽・操作報道」を規定し、被害額の最大5倍までの懲罰的賠償を報道機関に課せるようにするという内容を含んでいる。政府が気に入らない報道は「フェイクニュース」だと規定し、多大な罰金を科すと脅すことで政権批判を抑え込もうというものだと考えればよい。
韓国では政権に批判的な公務員が罷免されるという事件が起こっている。韓民鎬(ハン・ミンホ)文化体育観光部局長が、国家公務員法の誠実義務と品位維持義務に違反したとして、2019年10月に罷免されたのである。
文在寅大統領は最低賃金を大幅に引き上げる所得主導成長政策を行って多くの中小企業を廃業に追い込み、役に立たない反日扇動を繰り返し、産業力をなくさせる脱原発政策を推進してきた。こんなことをやっていたのでは韓国はもたないと、韓民鎬氏はSNS上でこうした文在寅大統領の政策を批判していた。これが文政権の怒りを買ったのである。
ちなみに韓民鎬氏は2017年のアンケート調査で『最も望ましくて見習いたい管理者』に選ばれほど、部下や同僚の信頼の厚い公務員の鑑であった。こんな韓民鎬氏が自分のSNS上で政権批判を行ったことを問題にして、誠実義務と品位維持義務に違反したとして罷免したのが文政権である。この文政権が今回の「言論仲裁法改正案」を用意しているところに、この法案の危険性が如実に表れていると言えるのではないだろうか。
世界新聞協会は、韓国政府や与党・共に民主党に対して言論仲裁法改正案を直ちに撤回するよう求めた。協会トップのヴィンセント・ペイレーニュ氏は「改正案がこのまま推進されることになれば、大韓民国政府は改革という名により、自由で批判的な討論を事実上抑制しようとする最悪の権威主義政権になるだろう」と述べている。
マスコミ関係者からなる「全国言論労働組合」も同改正案は言論改革の仮面をかぶった『言論統制』であり『言論蹂躪』であると批判している。
与党・共に民主党は若干の修正を認める動きを見せてはいるが、撤回する意思はないようである。韓国がかなり危険な状況になってきたことには注目しておきたい。
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