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メドベージェフ解任で、ロシア新首相に無名のミシュスチン氏! プーチンの思惑は?(朝香 豊)


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ロシアでは、メドベージェフ首相がプーチン大統領に解任され、後任には連邦税務庁のミシュスチン長官が就任した。

今回のポイントは3つある。

1つ目は、メドベージェフ氏がなぜ解任されたか。

2つ目は、なぜロシア国内でもほとんど名前の知られていないミシュスチン氏が後任の首相に選出されたのか。

3つ目は、プーチン大統領は今回の人事案の発表と同時に、大統領権限を弱める憲法改正案を提案しているが、この提案と今回の人事はどういう関係にあるのか、だ。

まずは1つ目のメドベージェフ氏がなぜ解任されたかだ。

メドベージェフ氏はロシアの宿痾ともいうべき汚職撲滅の、本来は旗振り役のはずだった。

だが、実像としてのメドベージェフ氏は汚職まみれで私腹を肥やしていた。

メドベージェフ氏のこの腐敗ぶりを暴露する動画が、反体制活動家のナヴァリヌィ氏によって2017年にYouTubeにアップされ、メドベージェフ氏の実像がロシア国民の間で広く知られることになった。

この動画で、メドベージェフ氏が自分の元同級生などが代表を務める団体を利用して、巨大な邸宅、ワイナリー、ヨットなど、莫大な蓄財をしている様子を描いてみせた。

これが3ヶ月で2000万回を超えて再生されるなど、ロシアでは大きな話題となった。

プーチン大統領はメドベージェフ氏を切る代わりにナヴァリヌィ氏への弾圧を強化してきたが、香港デモに影響を受けて、ロシアで起こる反政府デモが無視できない規模になってきた。

こうした動きを抑え込む必要をまずはプーチンは考え、氏の解任を考えたというところはあるだろう。

また、メドベージェフ氏は大統領を2期務めたことで、すっかり有名になった。

メドベージェフ氏を最初に首相に登用した際には、プーチン大統領としては氏は長い付き合いの信頼できる仲間のつもりだったのだろう。

プーチン大統領からすれば格下のイメージだったと思うが、メドベージェフ氏は独自の政治力を発揮するようになり、プーチン路線に必ずしもイエスとばかり答えるわけではなくなった。

この点がプーチン大統領に嫌われたとも思われる。

つまり、メドベージェフ氏の解任は、プーチン大統領にとってはこういう点で一石二鳥だったと思われる。

次に2つ目の、なぜ無名のミシュスチン氏が選出されたのかだ。

それは、プーチン大統領が自分の言うことを素直に聞く子飼いを、首相にあてがいたいと考えたからというのは、まず十分に考えられる。

おそらくプーチン大統領は、その任務にふさわしい、真面目で控え目な実務家を探し、ミシュスチン氏を抜擢したものだと思われる。

だが、それだけではない。

ミシュスチン氏が連邦税務庁の長官だったところにも着目してもらいたい。

メドベージェフ氏は汚職まみれであることがバレて、退任することになった。

ミシュスチン氏は税務庁長官として、税務庁にコンピューターシステムを導入して脱税摘発を率い、大きな徴税実績を上げているのだ。

メドベージェフ氏との対比で見れば、今のロシア国民としては首相として納得性の極めて高い人材だということになるだろう。

次に3つ目の、それではなぜ、プーチン大統領はこの段階で自らの大統領権限を弱めるように見える憲法改正案を提出したのかだ。

プーチン氏の考えている憲法改正の内容は詳細がはっきりしないところがあるが、1)大統領が首相を指名する現在の形を変えて、下院の役割が増大する、2)大統領の任期を「連続2期まで」から「最大2期まで」に変更するというのが、大統領権限との関係でのポイントだ。

まず1)の方だが、プーチン氏は今回のこの人事が、自分が在任中に大統領が首相を指名する最後の機会になると判断しているのだろう。

つまり、大統領権限を縮小したとしても、今の自分の権限には実質的には影響しない。

すでに連続2期、通算4期の大統領となっているプーチン氏が再び大統領の座に就くのは、国民から見て抵抗が強いだろう。

アメリカがシェールガス・シェールオイルの開発を進めた結果として、また世界的な景気減速を受けて、天然ガスと石油の需給関係は緩む一方で、天然ガスと石油に国家経済が依存しているロシアの経済は、現在非常に苦しいのが実際だ。

このように経済状況が悪い中では、プーチン人気も高まらない。

この環境で、自分が強引に再び大統領になろうとするのは賢明ではない。

だったら、自分が大統領になる道はなくしてしまえばいい。

また、自分が今後大統領にならないのなら、大統領の権限はむしろ縮小させたほうがいい。

何期も大統領をやって、権力を強めていくような奴もいないほうがいい。

自分が退任した後に、自分の寝首をかく奴がなるべく出てこないようにしておきたいからだ。

そういう判断を、プーチン大統領は考えたのだろうと思う。

では、プーチン氏が大統領をやめた後に、どうやれば彼は政治権力を握り続けることができるだろうか。

そこで出てきたのが、国家評議会の役割拡大という提案だ。

国家評議会をロシアの政策を実現するための司令塔にし、この議長としてプーチン氏は自分の政治的影響力を維持しようと考えたのだろうと思う。

2024年まで続く自分の大統領の任期中に、大統領としての打ち出しを徐々に国家評議会議長の打ち出しに切り替えて、実質的な権力者が国家評議会議長である状態に、なし崩し的に移行させようとしているのではないだろうか。

憲法改正段階では、一見ではこれによってプーチン氏に集中している大統領権限を縮小させるように見せかけることができ、反プーチン派の支持も取り付けやすいようになっている。

だが、実は大統領退任後にも自分に政治権力を残しておくための布石になっていると考えられるのだ。

プーチンの狡猾さはやはり相当なものだと思わされる。

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これの元ネタとなるBBCの記事
https://www.bbc.com/japanese/51130564

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