アメリカのイランに対する経済制裁で、イラン経済は大きなダメージを受けている。
世界銀行の推計によれば、2018年のイランの経済成長率はマイナス4.9%、2019年のイランの経済成長率はマイナス8.7%となった。
大規模デモが起こるのも無理はない。
ソレイマニ司令官暗殺の報復としてイランはアメリカ軍駐留基地にミサイル攻撃を行ったが、これに対する報復として、アメリカは経済制裁のレベルをさらに引き上げた。
新たな制裁は鉱工業品や繊維品の輸出を封じるもので、新たに制裁対象として17団体が指定され、その中にはイランで最大級の鉄鋼製造業者が含まれている。
イランは近年鉄鋼の輸出を大幅に伸ばしているので、今回のこの処置は泣きっ面に蜂だろう。
ミサイル攻撃でウクライナ機を撃墜したことをごまかしていたことに対するイラン国民の反発も強く、ハメネイ体制は危機を迎えている。
もちろん、アメリカの強引なやり方に対する反発は、ハメネイ体制を支える指導部だけでなく、一般国民の中にも当然強くあると見るべきだ。
それでも、核開発にこだわる姿勢を貫くことをしなければ、国民生活を犠牲にする必要などなくなるというのは確かなところで、怒りの矛先がハメネイ体制に向かっていくのは避けられないだろう。
反政府デモの弾圧で奪われた命は1500人に達するというのがアメリカ側の主張だ。
それだけ激しく行われてきた反政府デモが、ウクライナ機撃墜についてごまかしをしていた政府の姿勢に対する反発が強まる中で、また経済的苦境がさらに強まる中で、一段と激しさを増すことは十分に予想される。
実際反政府デモは、首都テヘランだけでなく、シラーズ、イスファハーン、ハマダーン、オルーミーイェなどでも行われているのが観察された。
スケープゴートではないかと思われるが、デモをあおった疑いで駐イラン英国大使が当局に拘束される事態まで発生した。
ハメネイ体制を潰そうとする勢力が本来ハメネイ体制を支える側であるはずの革命防衛隊の一部にも広がっていることが明らかになった中で、反体制派はさらに力をえている。
注目すべきはイランの半国営のファルス通信までもが、テヘランで起こったデモの様子を報道したことだ。
つまり、反ハメネイ派は半国営のメディアにまで公然と広がっているわけだ。
デモ隊は米軍に殺害されたばかりのソレイマニ司令官の写真を破ることまでしている。
イランが終局的に体制転換まで進むことになるのか、それとも体制転換の危機を乗り切るためにハメネイ体制が思い切った方向転換を図るのか、いずれにしてもトランプ大統領にとってみればウェルカムな結果ということになりそうだ。
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