現在発売中の WiLL 10月号にイスラム思想研究家の飯山陽氏の「朝日は女性・トランスの味方ではない」との論考が掲載されている。
飯山氏は閉幕した東京五輪がトランスジェンダー女性が初めて女性として参加したオリンピックとなったことを取り上げた。
トランスジェンダー女性が今回五輪に出場できるようになった背景には、国際オリンピック委員会(IOC)によるガイドライン策定がある。このガイドラインは2つの項目から成り立っている。一つはトランスジェンダー女性は自分が「女性」だと申告してから4年間にわたりその申告を変更しないこと、もう一つは12ヶ月にわたって男性ホルモンの1つであるテストステロンの値が1リットルあたり10ナノモル以下を保っていることである。
ここからトランスジェンダー女性は単なる自己申告だけではなく、それなりの客観基準が導入されたのだと評価する向きがある。基準はないよりあったほうが当然いいが、それはその基準が妥当であることを意味するとは限らない。
スポーツ科学者のロス・タッカー氏によると、トランスジェンダー女性はテストステロン値を引き下げる「ホルモン治療」を受けた後でも、男性としての優位性は1/5ほどしか落ちないという。
その結果、例えばトランスジェンダー女性が女子ラグビーの試合に参加するとなると、普通の女性たちの競技参加の怪我のリスクを大きく高めてしまうことになる。国際ラグビー連盟はこの安全性の問題を考慮して、トランスジェンダー女性が女子ラグビーの試合に出場することを禁じている。
元ニュージーランドの重量挙げの代表であるトレーシー・ラムレッツ氏は「女性として生まれた女性がスポーツにおいて平等な権利を持つことに賛成する」と述べているが、この見解は真っ当なものだろう。
普通の女性たちの競技参加の安全性や平等性を阻害してまでトランスジェンダー女性が女性として試合に参加できるようにするというのは不合理である。
ところで朝日新聞は「注目されるのは男女に分けない「ノンバイナリー」の考え方だ」とし、オリンピックにおいても「ノンバイナリー」にすべきだという主張を紹介しているそうだ。
従来の社会秩序をどうやって壊して社会に混乱と無秩序をもたらすかという観点ではこの「ノンバイナリー」というのは魅力的な考え方なのかもしれない。だが、こういう考えが普通の女性の権利のみならずトランスジェンダー女性の権利をもまともに考えていないことは明らかである。
飯山氏の主張をまとめると概ねこんな感じだが、私も全くその通りだと思う。私は普通の女性たちの安全性ということをこれまで考えに入れてこなかったので、この視点はとても新鮮に感じた。
またトランスジェンダー女性が持つ普通の女性に対する優位性というのも、数字的根拠なく直感のみに頼って考えていたところがあったので、この点でも非常に役に立った。
多くの人にこの飯山陽氏の論考を読んでもらいたいと思う。
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飯山陽氏の画像
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トランスジェンダー初の重量挙げ五輪代表のローレル・ハバード氏の画像
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