任志強氏は言いたいことを歯に衣着せずに語る人物だ。
北京の不動産業で大成功を収めたこともあって、「北京のトランプ」とも呼ばれていた。
中学で王岐山国家副主席と同級で仲がよく、王氏の後ろ盾がある中で言いたいことが言えるとも言われていた。
この任志強氏が「厳重な紀律・法律違反」の疑いで捕まったことが4月7日に公表された。
そしてこのたび「党と国家のイメージをおとしめた」として、党籍剥奪処分を受けた。
王岐山氏の擁護は今回は通らなかったようだ。
近々、汚職などの名目で、刑に服させられることになるのだろう。
彼の今回のコロナ騒動での発言が、習近平総書記の激しい怒りを買ったのだ。
その問題発言とは、以下である。
「権力を渇望する一人の『小バカ者』と共産党は、コロナウイルスの威力以上に、言論の自由に対する統制を強化している。われわれはこの愚かな行為から覚醒しなければならない。1976年に(文化大革命を主導した)『四人組』を打倒したように、前進の障害物となっているリーダーを打倒し、文化大革命の動乱を終結させるのだ」
この『小バカ者』が、習総書記のことを指しているのはわかるだろう。
「前進の障害物となっているリーダーを打倒し、文化大革命の動乱を終結させる」というのが、習総書記を引きずり下ろすクーデターを求めていることも明らかだ。
彼に対する処分はある意味では当然だが、潜在的には渦巻いている声を代弁したものでもある。
さて、任志強氏の党籍剥奪処分は、習総書記が現在進めている一連の更迭人事とも関係があると見るべきだ。
例えば、人民解放軍の北京衛戍区司令官の王春寧氏が更迭され、付文化氏が新司令官に就任した。
北京衛戍区司令部は、中国共産党の本部や要人の居住区がある「中南海」の警護に当たる重要部署だ。
王春寧氏が裏切る可能性があると習総書記が考えたということだろう。
その他にも、孫力軍(公安部副部長)、焦慧強(北京副検察長)など、多くの公安・警察に関わる人員が失脚している。
習総書記は、共産党員に対して、家族との会合を含むプライベートな時間に習総書記の権威を見下す陰口さえ禁止する内部通知まで出している。
アメリカとの対立が深まる中で、習総書記はこのように徹底的な締め付けによって乗り切る姿勢を鮮明にし、中国国内でこれに逆らうことは非常に困難になっている。
だが、近々開催される予定の北戴河会議の場では、長老たちは習総書記に対して遠慮なく意見を述べることができる。
このまま習総書記の路線を黙認すると、アメリカに逃した財産を全部吹っ飛ばされてしまうのは必至だ。
習総書記もそのあたりの長老たちの怒りは理解しているはずで、自らの言うことを聞く軍と警察によって「警備」を行い、自分との敵対を許さない方針だろう。
習総書記はこのまま北戴河会議を乗り切ることができるのだろうか。
北戴河会議の行方は要注目だ。
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画像はYahoo!ニュースから(王岐山)
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画像はNTDTVから(王春寧)
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