日本共産党の志位和夫委員長は「トランプ政権の無法な軍事力行使を非難し、外交的解決の道に立ち戻ることを求める」と題する声明を発表した。
この中で志位委員長は「どんな理由をつけても、主権国家の要人を空爆によって殺害する権利は、世界のどの国にもあたえられていない」と述べている。
ここで言う「主権国家の要人」が、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官のことを指しているのは明らかだ。
ところで、ソレイマニ司令官が指揮していたイラン革命防衛隊のコッヅ部隊には、テロ輸出部隊という性格が色濃くついている。
イラン国外で「民兵」と呼ばれる武装勢力を育成し、イランの利益に沿うようなテロ行為をそれぞれの地域で引き起こさせることを、コッヅ部隊は行ってきた。
ソレイマニ司令官が指導してきたこのようなテロ支援・拡散行為は、いったいどういう観点から、日本共産党は正当化するのだろうか。
さらに、志位委員長は「イラク国内で、標的とされたイラン司令官とともに、イラク民兵組織の幹部らも殺害したという点で、二重、三重に無法なもの」だと論じている。
ここで言うイラク民兵組織の幹部とは、イラクの民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」のアルムハンディス司令官のことだ。
ソレイマニ司令官とアルムハンディス司令官のふたりが、国連制裁違反を犯してまで面会している意味を、志位委員長はまじめに考えているのか。
ソレイマニ司令官は国連の制裁対象として、海外渡航が禁止されていた人物だ。
それは当然ながら、ソレイマニ司令官が国外の民兵組織の指導を通じてテロ行為を拡散させてきたからだ。
このソレイマニ司令官が国連制裁を破ってイラクに渡り、入国審査を通過してイラク国内に入境し、イラクの民兵組織の司令官と会っていたのだ。
本来入国の許可ができないはずの人物の入国をイラク政府が認めていたのは、イラク政府がイラン政府の強い影響力の下にあって、国連制裁をまじめに守る気がなかったことを意味する。
こうした反米・親イラン的なイラク政府の姿勢は、アメリカ大使館の警護のサボタージュにも表れている。
アメリカ大使館のあるグリーンゾーンは厳重な警備が幾重にも行われているはずの場所だが、そうしたものをすべてやすやすと突破してアメリカ大使館への襲撃が引き起こされた。
殺害は決して品のいいものではないが、その成否については行われた事情はまじめに検討した上で判断すべきである。
繰り返すが、イラク国内という場所は、イラク政府がアメリカの外交官の安全すらきちんと守る場所ではなくなっていた。
本来イランからの出国が認められていないはずのテロ指導者が、堂々と入境できる場所でもあった。
そしてそのテロ指導者が、アメリカ大使館などの襲撃に深く関与している民兵組織の司令官と面会していた。
そこではアメリカに対するさらなるテロ行為について話し合われている可能性も高かったろう。
その前提で「イラク国内で、標的とされたイラン司令官とともに、イラク民兵組織の幹部らも殺害した」と読めば、「二重、三重に無法なもの」と一方的に捉えることには決してならないであろう。
さて、ソレイマニ司令官の暗殺で、中東で大戦争が起こるようなことはありうるのだろうか。
思いがけないことから思いがけない方向に発展する可能性もあるわけだから、決めつけることはできないが、私は現実的にはないと思っている。
トランプ政権は対イラン政策では、これまでかなり自制的に行動してきた。
イランによってサウジアラビアの油田施設がドローンで攻撃を受けた際にも、対イラン戦争を回避した。
トランプ政権は、イラン側の強い拒絶にも関わらず、ロウハニ大統領との会談を粘り強く働きかけてきた経緯もある。
アメリカ側からの戦争回避・対話重視の姿勢からイランが背を向けるようにしてきたのは、イランの最高指導者ハメネイ師そのものの意向というより、強硬派のソレイマニ司令官の意向を無視しえないという国内事情が絡んでいたのではないかと思われる。
トランプ政権の狙っている落とし所は、将来的には核兵器が持てることを約束し、そのための技術の研究・開発は禁じていないような「核合意」の継続はできないが、核兵器の保有を実質的に断念するなら、段階に応じて制裁解除に動くというものだろう。
イラン国民の生活上の不満は強く、体制がひっくり返りかねないくらいの危機をイランは抱えている。
国内経済を犠牲にして、戦争にお金を使えるような状況にはまったくない。
だから、イランからすれば、本音としては制裁解除はどうしても実現したいはずであり、そのためのディールに応じたいのが本音だと思う。
だが、最強硬派のソレイマニ司令官が強い影響力を持つ中では、そうした妥協的な動きに出ることはできなかった。
確かに現在イランは報復を口にし、強硬な姿勢を見せてはいる。
メンツの観点からしても、すぐさま路線転換をするというわけにはいかない。
だから短期的にはもちろん大混乱するだろうが、ソレイマニ司令官が排除されたことで、実はイラン側にトランプ政権とのディールが実現できる可能性が出てきたと考えるべきではないかというのが、わたしの見立てだ。
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