中国に対して毅然とした対応が取れていないなど、いろいろと批判が集まる茂木外相だが、このところいくつかよい指摘もしているのは公正に見ておきたい。
茂木外相は2月23日にオンライン形式で開催中の国連人権理事会閣僚級会合でビデオ演説を行い、民主派や少数民族への弾圧が続く香港、新疆ウイグル自治区の人権状況を「深刻に懸念している」と表明した。これらの地域で基本的人権や法の支配といった普遍的価値が保障されるよう「中国に対し、建設的で具体的な行動を強く求める」と訴えた。中国共産党の行っていることを、ウイグル人に対するジェノサイドだとする認識を示すところまで踏み込んではいないのは今ひとつ迫力に欠けるが、中国に具体的な行動を求めたところは一応評価できる。
また茂木外相は25日に、新型コロナ感染症について、日本では先進各国と比べて圧倒的に低い水準に抑えられているのに、病床の逼迫が続く状況への疑問を呈した。世界的に見ても病床数の多いこの日本でこのような状況が生まれているのは奇怪な話であり、この点についての理解が国民の間に行き渡るのは大いに必要なことだと私も思う。
その上で、新型コロナのワクチンについても「科学技術立国といわれながら、国産のワクチンをつくれない。それだけの科学力しか持っていない国なのか。ここは中長期的な課題として考えなければいけない」と指摘した。
この点も非常に大切な指摘で、例えばアメリカではDARPA(国防高等研究計画局)が民間だけではリスクが大きすぎて思い切った投資ができない研究開発投資を、DARPAがリスクを背負うことで推進させるという仕組みができている。日本とアメリカとの違いは、国防意識の違いにもあるだろうが、どうすれば民間の研究開発を促進できるかという根本とも関わる話である。
思い切ってお金を出しても失敗することは当然あるわけだが、そのリスクを国家が引き受けないとできない投資というのも多くあり、またそういうものこそが次世代を切り拓くフロンティアとなる。つまり、国家的なプロジェクトとして促進させる意義があるものが多い。
リスクは国家が引き受け、リターンは民間が受け取るといえば、政財界の癒着のように捉えられそうだが、国家にも十分なリターンが生まれる仕組みなら十分に作ることができるはずだ。こうした形で民間活力を活用する投資を国家が後押しするというのは、今後十分に考えるべきことではないだろうか。
政府内部でどういう結論を出すかはわからないが、茂木外相の問題提起は現状の政府と民間との関係を変える可能性があるものとして、大いに評価したい。
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茂木外相の画像
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