菅義偉首相が2050年までに温暖化ガス排出を実質的になくすと表明したことを受けて、2021年11月に開かれる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の議長を務めるアロック・シャルマ氏は、日本の2030年での削減目標について、2013年比50%前後が妥当との見解を示した。
シャルマ氏は中国が2060年までに脱炭素を実現するとしたことを高く評価しているが、中国はCO2の削減は2030年までは進めないことを公言していることと考え合わせると、2030年にはゾッとするような未来が待っていることになる。
日本が2030年に2013年比で50%のCO2削減を行うとすれば、日本の経済成長は全く期待できない。サプライチェーンの安全を考えて、中国から日本に製造業の拠点を戻すような処置は、全く考えられないことになる。中国は2030年までCO2の排出量を増やすとしているのであり、だったら製造業は中国に置いたままでないと困るということになる。
この結果、製造業では圧倒的に中国が優位になり、それが経済力にもつながり、軍事パワーにも影響する。まじめに環境規制に取り組めば、そのまま中国の体制に対して敗北することにもなりかねないのである。
ここまでの構図を理解した上で、地球環境問題を考えてもらいたいものだ。
さて世の中では、ガソリン車廃止は時代の流れで、今後は電気自動車(EV)の時代が来るとされているが、現実はそんなに単純ではない。世界中が電気自動車になった場合に、それだけのリチウムが供給できるかは疑問で、リチウムの取り合いによる価格の高騰も当然発生することになる。生産量が増えればEV車の価格はガソリン車よりずっと安くなるというのは、なかなか現実化しにくいだろう。
リチウム採掘による環境破壊も深刻にならざるをえない。バッテリーは決してエコではないし、製造から廃棄までのコストは甚大である。そうしたコストを負担できるほど、我々は豊かだとは思えない。
EVというと、欧州の自動車メーカーがとりわけ先進的に推進しているイメージがあるが、欧州メーカーにしてもこれだけを推進すればいいというイメージには実際にはなっていない。2050年までの時間の流れる方向が決まっているというイメージを持っているとすれば、それは決して正しいものとは言えないであろう。
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