世界的な原油の高騰が続く中、アメリカのバイデン政権が、各国で協調して価格を引き下げるため、日本、韓国、インド、中国に石油備蓄の放出を検討するよう要請したことが報じられた。
各国が協調して石油の供給量を増やすことで、価格の引き下げにつなげようということのようだが、これがうまくいくだろうか。
そもそも今日の原油価格の上昇には、バイデン政権の失政が大きく影響していることを見落とすべきではない。バイデン政権はトランプ政権が推し進めていたシェールオイル開発に対して環境問題を理由に大きな制約を加えた。この結果、アメリカの石油生産は2割弱低減することになった。この結果、アメリカは石油を100%自給した上で輸出もできる国から、一部の石油を再び輸入しなければならない国になった。これは世界の石油供給に大きな影響を与えている。ちなみに現在世界最大の産油国はアメリカであることを忘れてはならない。
バイデン政権はさらに、カナダの油田とアメリカ南部の製油所を結ぶキーストーンXLと呼ばれるパイプラインのプロジェクトも中止した。さらに「ライン5」と呼ばれるカナダ西部とミシガン州・ウィスコンシン州などを結ぶ既存のパイプラインの停止にも動いている。(停止するかどうかは現在係争中)
このように「グリーンニューディール」政策によって、化石燃料を忌み嫌う動きを一気に強化したことが、アメリカの石油価格の上昇に大きく関係しているのは間違いない。
そもそも化石燃料への投資を許さないような流れができている中では、化石燃料の増産がままならないのは当たり前ではないだろうか。そしてジョン・ケリー元国務長官を気候変動特使に任命してこの流れを世界政治の舞台で一気に強化する流れを作ったのもバイデン政権である。その意味ではまさに自業自得と言わざるをえない。
自らの失政を棚に上げて、一時的に備蓄している石油を放出したところで、その効果は放出している短い期間でしか有効ではない。長期的な根本解決にはつながらないのである。
さらに言えば、石油の備蓄はいざという時のためのものである。日本には90日分の保管があり、諸外国に比してかなり多いとされているが、いざ石油が入ってこないという事態が発生した場合への備えとしては心もとないものがある。今回の価格変動が一時的な理由によって生じているだけであると考えられるならば、高値になっている時期を利用して安値で購入した石油を部分的に放出するのは意味はあるが、今回はそうではない。化石燃料への新規投資をなかなか認めようとしない現状の構造の中では、石油は上値に貼り付く公算が大きいと言わざるをえない。その状況下で備蓄した石油の放出を行うことにはためらいを感じるのは普通のことだろう。
バイデン政権としては来年の中間選挙で民主党が大敗するのを少しでも食い止めるために焦っているのであろうが、これに付き合わされたのでは我が国としてはいい迷惑である。こんな状況でもアメリカに付き合わざるをえないのは悲しい現実である。
バイデン政権はまた、国内の石油関連企業が不正にガソリン価格をつり上げていないか、調査を進めるよう関係機関に指示した。ここにも自らの失敗を棚に上げて、原因を外部に求める姿勢が隠れている。OPEC(石油輸出国機構)やロシアが石油の増産をしないことも非難しているが、自国での減産を棚に上げてのこの非難は当を得たものとは言えないだろう。
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nhk.or.jpの記事
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211118/k10013352371000.html
バイデン大統領の画像
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