防衛省は19日に鹿児島県・屋久島南方を航行していた中国海軍の測量艦1隻が、日本の領海に侵入したことを発表した。同省によると、中国軍艦の領海侵入は2017年以来4年ぶりのことだ。測量鑑が日本の領海で何をしていたかなど、普通に考えればわかるだろう。だが、日本政府は外交ルートを通じて中国側に「懸念」を伝えたと報じられている。
また同日に中国、ロシア両空軍の爆撃機が共同で日本周辺を飛行したことも確認された。
さて、この3週間ほどの間に岸田総理は様々なメッセージを中国に送っていたはずだ。自民党の幹事長を甘利氏から親中派の茂木氏に交代させ、外務大臣にもやはり親中派の林氏を就任させた。人権問題を厳しく取り扱う日本版マグニツキー法の制定に後ろ向きの姿勢を示し、北京オリンピックについて外交ボイコットすら表明するのを避ける動きすら示した。
こうした中国に配慮していることを示す一連のメッセージに対する中国側の答えが、この一連の中国側の軍事的行動である。
即ち、親中姿勢を示せば中国側も日本に対して配慮してくれるとの岸田総理の思惑と裏腹に、日本が親中姿勢を示せば示すほど中国側は日本にまだまだ攻め込んでも大丈夫だと考えて行動をエスカレートさせているわけである。
日本政府が勘違いしているのは、日本が中国に対して決然とした対応を取ることで本当に困ることになるのは中国なのであって日本ではないということである。
日本政府は中国と強いビジネス関係を築いている日本企業から出される声に押されているのであろうが、ここでもう一歩進めて考えるべきなのである。
日本政府が中国に対してしっかりとした声を上げた場合に、中国は日本企業に対して嫌がらせをしてくる可能性はもちろんある。だが、日本企業がどんどんと中国から引き揚げるような事態は中国は当然ながら望んでいない。
例えば中国の輸出総額の2/5は外資系企業が担っていることが指摘されており、その中での日系企業の比重も大きい。しかも中国が今後稼ぎを増やしていきたい高付加価値製品の場合には、外資系企業が担っている比率が当然ながらさらに高い。この状況を考えた場合に、中国側が日本企業に本格的な嫌がらせを行える余地などないのである。
そこを敢えて無視して中国側が強硬な動きを示したならば、この動きに対する懸念は日系企業だけに限らず米系企業や欧州系企業にまで波及していくことになる。それは中国にとって自滅的な行動となってしまう。
さらに言えば、日本版マグニツキー法を制定する際に、制裁対象国から日系企業が嫌がらせを受けた場合の救済処置についてしっかり定めておくだけで、中国側の手足を大きく縛ることもできる。そしてこれは日系企業が中国から撤退する自由を確保するのも大いに役立つことになる。
中国が日本に対する嫌がらせをオーストラリアのように行えば、日本国民はそのことによる生活上の不便に不満を抱くよりも、中国の理不尽な行いに対する怒りを高める方がはるかに強いであろう。それが世界を変える力になる。
岸田総理は香港が進んだ道を頭に置いておくべきだ。民主派の行動を冷ややかな目で見て目先の安寧を選んだ香港の財界人たちは、現在自分たちの財産の保全に不安を抱える道を選択したことに気付いているであろう。
香港と同じ過ちを日本も犯すのが正しい選択肢なのだろうか。それとも従来の「無難」な路線から決別するのが正しい選択肢なのだろうか。言わずとも明らかではないか。
こうした選択をきちっと行うことは、岸田総理が歴史に残る大総理として名を残すのに最も適した道であると考えるが、ぜひ岸田総理のお考えを聞かせてもらいたいものである。
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