中国民営企業で中国のEC企業第4位の蘇寧易購の国有化が決まった。創業者で会長の張近東氏と関連会社である蘇寧電気が保有する株式は国有企業数社に譲渡されることになり、南京国有資産管理委員会が蘇寧易購の新たな筆頭株主となる模様だ。ちなみに蘇寧電気はラオックスを買収したことでも知られる家電量販店である。
蘇寧の経営が行き詰まってきたのには、蘇寧易購に対する多額の投資がなかなか回収できずにきたという側面もあるが、それだけではない。中国最大の不動産ディベロッパーである恒大集団の経営が傾いた際に、蘇寧は恒大集団への出資を中国共産党から求められ、これによって経営が悪化したという面も強いのである。つまり、私企業が自己責任で経営がおかしくなったというのとは随分違う要素が絡んでいる。
蘇寧の立場からすると、利益を出すにはまだまだ多額の投資が必要な蘇寧易購が国有企業化されることで、負担を軽くすることができるというメリットもある。恒大集団への無理な出資をさせられてきたことを考慮した負担軽減策の意味合いもあるだろう。
だが、張近東氏からすれば、自分の育てたいビジネスがこれによって自分の手から切り離され、国家の統制の中で思ったような展開が今後望めなくなるのは無念であるのは間違いない。
習近平は民間企業にも国有企業同様の従順さを求めている。すなわち、中国共産党の路線にすべて従うような動きである。今回は蘇寧易購のみの国有化であるが、これが蘇寧電気などにも波及していくのはおそらく避けられない。こうして民間企業特有の活力は、中国経済から消えていく運命にある。
習近平が権力構造を固めてきてからは、国有企業の領域が拡大し、民有企業の勢力が削がれている「国進民退」の流れが明白になってきた。中国経済が急激に伸びた改革開放時代と真逆の経済がどんどんと進められ、毛沢東時代への回帰が強まっている。これが中国経済の力をどんどん奪っていくのは間違いない。
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