日本学術会議の会員人事で、任命されなかった6人の研究者が任命拒否の理由を求めた情報開示請求に対し、内閣府や内閣官房はいずれも開示しない決定を出した。
採用されなかった人たちの不採用理由を開示するというのは、どんな組織においてもほぼ行われていないだろう。その意味で開示しない決定はその意味では当然のことだと言える。
その上で敢えて言いたいのは、この機会に政府が日本学術会議の不正常さを正面から問題にすべきだったのではないかというところだ。
中国には「国防七子」と呼ばれる軍事系の大学が7つある。この「国防七子」は中国人民解放軍と深い関係があり、中国の国家国防科技工業局の監督下にある。経産省はかなり前から「国防七子」の問題を理解しており、日本の大学側に機微技術が留学生によって流出しないよう、輸出管理担当部署の設置を求めてきた。文部科学省も「国防七子」などを相手にする場合には原則として交流協定を締結してはならないとのガイドラインを作成している。
にも関わらず、「国防七子」と日本の45の国公私立大学は大学間交流協定を結んでおり、9校は共同研究の実績まであるのである。日本学術会議は「軍事研究の禁止」との立場から、大学が防衛省との協力を行うことを徹底して妨害してきた。ところが、日本の大学が「国防七子」と交流協定を結ぶなどの深い関わりを持つことを、日本学術会議が問題視したことはない。
中国の軍事的脅威が高まる中で、国防力の強化を求めるのは当然であり、そうした研究が大学においても行われることを求めるとしても、ある意味当然であろう。少なくとも、日本の防衛省に協力することはダメだが、中国に対して軍事協力を行うのは構わないということに賛同できる日本国民はまずいないはずだ。
だが日本学術会議は事実上その路線を支持してきたというのが現実であり、ここに人選の問題を含めて大きな歪みがあることは間違いない。だから6人の研究者の任命拒否が正当かどうかという小さい問題に焦点を向けるのではなく、日本学術会議の存在意義自体から問わなければならなかったのではないか。
結局こうした本質論に踏み込まなかったために、こういう事情をよく理解できていない人たちの中では、今回の任命拒否は、政府が恣意的な人選を行い、政府の気に入らない人間を排除しようとする企みなのだという話に納得してしまうことになるのである。
この問題においても、結局本質に踏み込むことをしなかったわけだが、いつまでもこのような曖昧な状態を続けていていいのか、もうそんな時間的余裕はなくなってきているのではないかというところで、菅政権の踏み込み不足を感じざるをえない。
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日本学術会議任命拒否6人の画像
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