昨今はSDGs(持続可能な開発目標)が重視され、そのためにはESG(環境や社会性への配慮を行い、法令遵守や情報開示などの企業統治を強固にすべきとする考え)を考慮することが当たり前であるかのように言われるようになった。こうした上位概念を設定することで、企業は効率性を犠牲にせざるをえない状況になってきている。
一例として製鉄事業を考えてみよう。鉄鉱石から鉄を作る際には、鉄鉱石に含まれる酸化鉄(Fe2O3)から酸素(O)を外す作業が必須であり、従来は石炭(C)を酸素(O)と結びつける中で、酸化鉄(Fe2O3)を鉄(Fe)に還元するということを行ってきた。この中でCO2ができるのは必然だが、CO2を排出するのはESG上問題であり、SDGsに合致しないという理由で、この当たり前のプロセスが否定されるようになってきている。その結果として、石炭(C)の代わりに水素(H2)を利用するという方式を新たに開発することが求められ、水素を利用するために何らかの形で水素を用意しなければならなくなる。例えば水を電気分解して水素を得るといったやり方になるが、そのためには水の電気分解のための膨大なエネルギーが余計に必要になる。こうしたコストは製品価格に上乗せされることになり、当然ながら私たちの暮らしはその分圧迫を受けることになる。
こういう例でわかるように、我々は利便性や効率性を犠牲にすることが求められる動きになっているわけだが、この中でなんと牛肉を食べるのをやめようという動きまでもが広がっている。
世界の温暖化ガス排出量の約15%は畜産業から発生し、うち6割を畜牛業界が占めるから、私たちが牛肉を食べるのをやめれば、温室効果ガスの削減に大きく寄与するという理屈である。牛1頭がゲップやおならとして放出するメタンガスの量は、1日160 〜320リットルになると試算され、メタンガスはCO2の25倍の温室効果があるとされる。だから牛肉を食べるとか牛乳を飲むために牛を育てるのは環境に良くないから、これからはやめるべきだという話になっているのだ。
この観点から、アメリカの有名なレシピサイトの「エピキュリアス」は、牛肉を使ったレシピの掲載をやめた。スーパーでは牛乳の代わりにオーツ麦、アーモンド、豆などから作った「植物性ミルク」が広がり始めた。この「植物性ミルク」はコカ・コーラも製造に乗り出し、ダノンなども続く見込みである。オーツ麦を使った「植物性ミルク」を製造するある企業がナスダック市場に来週上場する予定だが、時価総額は100億ドル(1兆円)を超えるのではないかと予想されている。これからのトレンドを先取りしているということなのだろう。
ニューヨーク市を代表する超高級レストラン「イレブン・マディソン・パーク」はさらに先に行く。コロナ禍からの回復で6月上旬に営業を再開する予定になっているが、これに際して野菜を中心としたメニューに全面的に切り替えると発表した。今まで当たり前にしてきた肉や魚介類の提供をやめ、植物性素材だけで高級料理を作る方針に切り替えたのである。つまり、牛だけを問題にするのではなく、動物の生命倫理も大切にするというわけである。
牛肉を取らないとか牛乳を飲まないというのが個人の趣向のレベルであるなら、それを社会問題化する必要性は全く感じない。一部の企業がその方向に動くというのも、それもまたありだと思う。だが、社会全体が特定のあり方のみが正しいとの前提で動いていくというのは危険である。CO2の排出量が国際的な公約にされるほど、SDGsへの流れは当然視されているのが今の世界の流れである。
これからの世の中はSDGsは当たり前だと考えている人は多いだろうが、経済の非効率性を高めていくようなものが、本当にこれからの正しいあり方なのだろうか。私には全くそうは思えない。
経済の非効率化は悪性インフレにつながり、我々の暮らしを直撃する。今は多少インフレになったほうがいいなんて言って正当化できるものではない。需要に牽引されて供給力が高まるインフレは歓迎できるが、非効率化が進んでコストが上昇することで起こるインフレは最悪である。
今世界はインフレに向かい始めているが、この流れは決して喜べるものではない。
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