人権・民主主義

問題をすり替える朝日新聞の社説! 朝日新聞批判はリベラル論調の批判ではなく、事実を忠実に報道しない姿勢にあることを無視するな!(朝香 豊)


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朝日新聞阪神支局が銃撃され、記者1人が死亡、1人が重傷を負った赤報隊の事件が発生してから34年を迎えるにあたって、朝日新聞は「支局襲撃34年 SNSを凶器にしない」との社説を載せた。

朝日新聞がこの事件を「暴力で言論を封殺しようとする、民主主義への重大な挑戦」だと述べていることには大きな異論はない。たとえどんな言論であったとしても、それを暴力という言論以外のもので封殺しようとするのは、決して許されることではない。「事実に基づかない批判や憎悪をあおる行いは、自由な発信を妨げ、社会を萎縮させる」との主張にも賛同する。

問題は、報道の第一原則が事実に徹底的に忠実でなければならず、これの捻じ曲げを行ってはならないという点にあることを、朝日新聞が完全に無視しているところにある。

朝日新聞が「角度をつける」報道を行っていることは、朝日新聞自身が認めているところだ。「角度をつける」ことが事実よりもはるかに優先していることで、朝日新聞は数々の問題を生み出してきた。

慰安婦報道はその典型である。そしてこの慰安婦報道については「第三者委員会」による検証まで行ったはずなのに、自分の報道が過ちであったことを国際報道ではほとんど行っていない。日本国内では朝日新聞の過去記事の訂正はかなり知られる事態になっているが、国外では殆ど知られることのない状態になっている。これは朝日新聞が今なお真実よりも「角度」の方が重要であると考え、間違った「角度」を真面目に正す気がないことを如実に表している。

福島第一原発事故の際に、現場の職員が吉田昌郎所長の待機命令に違反して福島第二原発へ逃げたと報じた報道も思い出すべきである。事故の検証委員会の聴取に応じた、吉田元所長の証言は通称では「吉田調書」と呼ばれる。この吉田調書が本人の上申書に基づいて非公開とされ、不幸にも吉田元所長が亡くなったことから、この内容を180度捻じ曲げて報じたのが朝日新聞であった。本人がこの世にいない状態になれば、事実に基づかない内容であっても公開に転じることはなさそうだから、ニセ報道を行っても絶対にバレることはないと朝日新聞は考えたのであろう。だが、吉田調書を独自に入手していたジャーナリストの門田隆将氏らが、朝日新聞の内容の受け止め方があまりにおかしいことを指摘し、その後内容の真偽について問われる事態に発展し、「吉田調書」の全面公開を求める訴訟が起こされるまでに至った。これらの動きを受けて日本政府は吉田調書の公開に踏み切り、朝日新聞は公開されたその日の夜に、全面的な謝罪に追い込まれた。

朝日新聞は社説の中で「卑劣な行為にひるむことなく、報道の使命を果たしていくことを改めて誓う」としているが、報道の使命とは「角度をつける」ことではなく、まずは事実をありのままに伝えることである。事実に基づかずに「角度をつける」ことを、朝日新聞は「卑劣」だとは思わないのであろうか。

いわゆる「保守派」と呼ばれる人たちの中には、事実を軽視して不当に日本を貶める報道姿勢に批判的なだけで、主張そのものはリベラル派と大差ない人もかなり多い。こうした人たちがどうして朝日新聞を許せないと思っているのか、朝日新聞はまじめに考えるべきである。

朝日新聞は事実に基づかない反政府的な言論の自由さえ許された日本にも多くの問題があるのだと様々に告発するが、それより遥かに問題が多いはずの中国や北朝鮮の抱える問題については多くを語らない。道理・人権・自由・民主主義・法の支配といったものが心の底から守るべき価値のあるものだと思っているなら、中国や北朝鮮の抱える問題を軽く扱うことは断じて起こりえないであろう。こういうところに朝日新聞の闇を感じているのは、決して私一人だけではない。

別に日本の問題を語るななどという極論を言うつもりもないし、事実に沿った話であるなら、むしろ遠慮なくどんどんと日本の問題だって論じてもらいたいと私は思っている。その意味ではもっと取り上げてもらいたいものがいくらでもあるのに、朝日新聞だけでなく殆どのマスコミがそういうものを取り上げていないことに落胆している。報じるか報じないかは朝日の好きな「角度」に沿うかどうかによって決まっていて、事実を曲げても「角度」に合わなければ報道しないというのはあまりにもひどいと考えているだけだ。

朝日新聞が心を入れ替えて、こうした疑念を完全に晴らすような報道を行わない限り、朝日新聞が「卑劣な行為にひるむことなく、報道の使命を果たしていく」とは全く信じてもらえないことを、朝日新聞は理解すべきだ。

そもそも「言論の自由を守れ!」と朝日新聞はよく語るが、若手記者が取材内容を自由に報じる自由を、朝日新聞は認めていないではないか。朝日新聞独自の「角度」のつかない記事は掲載されることがないのは、よく知られた話である。記者たちが取材によって事実に基づいた記事をまとめても、それを発表できる機会を圧殺しておいて、何を言っているのか。今回掲載された社説についても、朝日が守りたい「角度」が露骨に出ていることをはっきりと指摘しておきたい。朝日新聞の付けたい「角度」にとって不都合な言論を取り締まりたいという思惑が表れているからだ。我々にとって大事なのは、朝日新聞が付けたがる「角度」ではなく、事実である。

朝日新聞が事実に忠実な報道を行っているのであれば、そのリベラルな姿勢について問題視する人は殆どいないであろう。今回の社説によって示された朝日新聞の姿勢は、問題のすり替えでしかないことを、最後に述べておく。
 
 
 
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吉田調書の内容を捻じ曲げて報道する朝日新聞の画像
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吉田調書問題で謝罪する朝日新聞社長の画像
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