今回の記事は「松尾利昭」さんの寄稿記事です。論拠がしっかりしていて、一方的な決めつけがなく、反対意見の人たちを罵倒するようなものでないといった基準に合致していれば、寄稿記事も歓迎しています。ぜひお読みください。
今年1月、電力需給はLNGの調達不足、長期の天候悪化による「再生可能エネルギー」の供給不足などの複数の要因が重なり、全国的に逼迫した。先月(5月)25日にも、経産省は今年度の夏と冬の電力需給が逼迫する見通しになっていることを発表した。特にこの冬は東京電力管内での需給が非常に厳しく、電力不足が生じる恐れも指摘されている。
電力需給逼迫の背景は、高額な固定価格買取り制度で支援される再生エネルギーの発電量が拡大する一方で、これに圧迫される形で火力発電の需給関係が悪化し、その取引価格が低迷していることが大きい。不採算な発電設備は廃棄されざるをえず、発電余力が失われているのである。さらに原発の再稼働がなかなか進まないことも影響している。
経済産業省は2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する政府目標実現に向けて、太陽光などの「再生可能エネルギー」は、現行目標の22―24%から36―38%に引き上げる意向を示したが、原子力発電の比率はこれまでの20―22%を維持する方向である。経産省は「再生可能エネルギー」だけの場合には電力料金は今の4倍になることを試算しながらも、電力料金の高騰につながる「再生可能エネルギー」比率の上昇には無頓着である。
だが、日本を支えている製造業を守るためには安い電力が必要である。これまで日本は太陽光発電の導入や原発の停止により、電気料金は高くなってきた。
これが原因の一つとなり、日本の産業の空洞化が進行していることを軽く見るべきではない。例えば、日本製鉄は今後5年間で現在5000万トンある国内粗鋼生産能力を4000万トンに引き下げ、海外生産能力を1600万トンから5000万トン超に増強するという。ホンダは四輪車のエンジンや変速機の部品を手掛ける栃木の部品工場を、令和7年中に閉鎖すると発表した。CO₂削減のため莫大な出費が必要になれば、石油工業、化学工業なども立ち行かなくなる。
最近、SNSのデ―タセンターが中国や韓国にあるのが問題になったが、これも日本の電気代が高いことが影響していることを見逃すべきではない。
自動車業界は、電源構成に占める火力発電の割合が高い日本で、EVが急速に普及するとかえって発電時のCO₂排出量が増える恐れがあり、電力不足につながる可能性もあると懸念している。
この中でトヨタは2030年の世界市場での電動車販売台数目標(ハイブリッド車を含む)を従来の550万台から800万台に引き上げ、そのうち電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)は100万台から2倍の200万台に引き上げた。ホンダは2040年に全四輪車をEVとFCVにする目標を発表した。電力料金が高くなる中では、日本国内での生産を維持することは現実的に難しくなる。
脱炭素と安定電源の両立をはかるには原発の活用しかないことは、各国の指導者は理解している。現在稼働中の原発は、米国94基、フランス56基、中国49基、ロシア38基などである。中国とロシアは原子力分野で連携を深めている。中国はロシアが設計した原発4基の建設に着手した。日本は33基中、稼動9基、検査済7基である。
そして現在世界は次世代の安全・安価な小型原子炉の開発にしのぎを削っている。フランスのマクロン大統領は、海外に依存しないエネルギー政策の重要性を強調し、さらに次世代型欧州加圧水型炉を建設中である。米国ではベンチャー企業が開発を進めているが、その中でニュースケ―ル・パワーは、2029年の商業運転を目指して建設計画を進めている。英ロ―ルス・ロイスは、加圧水型軽水炉(PWR)の技術を転用した小型モジュールの原子炉を開発中である。
こうした中、日本の原子力産業の潜在力は実は大きい。日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と合弁で出力30万kWの原子炉を開発中で、2030年ごろの実用化を目指している。東芝は、冷却材に液体ナトリウムを使う高速炉など2種類の小型原子炉を開発中だ。三菱重工は、蒸気発生器など主要機器を原子炉容器内に統合することで小型化を実現するとし、小規模グリッド向けの30万kW級だけでなく、災害非常用電源などに利用できる3万kW級の船舶搭載炉の開発も進めている。米ベンチャーのニュースケ―ル・パワーのプロジェクトには、日本の日揮HD及びIHIも参画している。
次世代原発の中には高温ガス炉(HTTR)というものもある。HTTRは日本原子力研究開発機構が開発中の小型モジュール炉で、運転中の冷却材にヘリウムガスを用いるものだ。冷却水を必要としないが、水素の生成が可能で、海水淡水化を組み合わせれば、生じた熱エネルギーの80%が利用可能となる。
日本政府はこうした小型原子炉利用へのシフトを大々的にぶち上げて、これにより原子力発電比率を圧倒的に高めるエネルギー計画を打ち出すべきではないだろうか。EUを見習うなら風力ではなく、フランスの原子力政策である。原発比率が50%以上になることを願う。
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小型原子炉の画像
https://www.jaea.go.jp/04/o-arai/nhc/jp/research/system/design/images/design_01.png
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