毎日新聞の世論調査によると、2月4日に開幕する北京冬季オリンピックについて「楽しみだ」との答はわずかに17%にとどまり、「中国の人権問題やコロナの感染状況などを考えると楽しむ気持ちになれない」が60%を占め、「関心がない」も23%あった。中国でのオリンピック開催に晴れやかな気持ちになれない人が多いのは当然だろう。
北京でもオミクロン株の感染が見つかったが、これが天津との人の行き来によって生じたことを中国政府は認めず、カナダから到着した国際郵便のせいにするという非科学的なことをおこなった。こうした一部の例外だけが北京での感染なのであり、それを除けば北京では感染がないことになっている。恐るべき情報統制である。
当たり前だが、現在北京ではオミクロン株は相当に広がっていて、五輪開催時にはピークに達するのは間違いない。幸いオミクロン株なので重症になることはほとんどないと思われるが、それでも事実を認めないというのはさすがである。
コロナのことであればまだいいが、選手たちの安全を考えると気が重い。
冬季北京五輪大会組織委員会の国際関係部局の副責任者ヤン・シュウ氏は、「オリンピック精神に反した行動や発言、特に中国の法律や規制に違反するものは、いかなるものも特定の処罰の対象となる」と述べた。処罰としては、選手の参加資格の剥奪が考えうるとした。はっきり言えば、選手に対する脅しである。こんなオリンピックは前代未聞だろう。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、「(作家ジョージ)オーウェルが描いたような監視国家」では、選手たちは「守られない」とし、北京冬季大会で選手が意見表明をすることの危険性について注意を呼びか、人権問題について「黙っている」よう求めた。
HRWのディレクターのミンキー・ワーデン氏は、「中国ではアスリートは監視され、発言と抗議の権利は奪い取られる」「選手が自らの安全を考慮しなくてはならない状況は、現代のオリンピックでは前例がない」と述べた。
コロナ感染を理由に選手が競技に参加できない可能性もある。これが中国にメダルを取らせるために悪用されることはないと信じたいが、中国ゆえにこの点でも信頼をすることができない。
参加者の健康状態の把握、チャットルームの提供、競技に関する情報提供を行うための専用アプリ「MY2022」にはセキュリティ上の欠陥があって、中国に批判的な言葉やウイグル弾圧を指摘する言葉など使用禁止にできる検閲機能がついていることもわかっている。個人情報の漏洩リスクも大いにある。日本政府は日本の代表団に対して北京五輪専用のスマホを与えるようにしているのだろうか。甚だ心配だ。
このような積み重なる異常事態に対して、肝心のIOCが何も意見を表明していないのはどういうことか。今回の五輪を通じてIOCの権威が失墜するのは確実だ。少なくとも西側においてはIOCはもはやまともな機関だとは考えてもらえないだろう。
世界中のスポーツで「前向きな変化」が起こることを目指す選手中心の団体「グローバル・アスリート」のロブ・キーラー事務局長は、「IOCは、声を上げると決心した選手全員を守ると表明していない。沈黙は共謀であり、だからこそ私たちは懸念している」と述べた。
当然であろう。
このようにさまざまな観点で醜悪な大会になることが予想されるが、普通に終わらないことが次の変革を促すことになる。結果的には今後の五輪や対中政策がどうなるかのターニングポイントになるのではないか。どれほど問題の多い大会になるのか、注目しておこう。
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毎日新聞の記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/148e0858b2ce1e064e658fb51df7df882daad2fa
BBCの記事
https://www.bbc.com/japanese/60063866
Business Insiderの記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/559e785898ef148d9e004534659bfb97a9dc2b46
北京五輪の画像
https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/6/d/600m/img_6dfe41c1297c9f9d940979b6e091ea751667369.jpg
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