ワルはワル知恵を徹底的に働かすことがあるという当たり前のことを、日本という国は忘れていたかのようだ。
ゴーン被告はフランス国籍2通、レバノン国籍1通、ブラジル国籍1通の4つのパスポートをもともと持っていて、その全てを弁護団に預ける条件で保釈が認められていた。
4通のパスポートの全てを弁護団が預かってしまうと、当人のパスポート不所持に該当して法律違反になるとの屁理屈を述べたのが弁護団であり、その訴えにもっともだ理解を示したのが、東京地裁である。
それで鍵付きのボックスの中にフランス国籍のパスポートを入れて当人に返すというアホな処置が取られた次第だ。
弘中惇一郎弁護士は「経緯を失念していた」と述べているが、失念していたはずはないだろう。
自分たち弁護団が責任を持って保管し、パスポートの提示が必要とされる事態が発生したら、その時に自分たちで適切に対応すればいいだけだという理屈がわからなかった訳はない。
鍵付きの箱に入れたにせよ、パスポートを当人に返すという処置が、次にどのような展開になりうるかということを全く予測できなかったとは到底思えない。
そもそもキャロル夫人についても、レバノンのパスポートを差し押さえていたところ、事情聴取が予定されていたにもかかわらず、アメリカのパスポートであっさり出国されてしまうという事件もあった。
ハッキリ言えば、「未必の故意」を問われても仕方ないくらいの話なのだ。(裁判所が認めているので、問われることはないが。)
なお、出国の際にこのパスポートのままで出国できたとは考えにくい。
このパスポートを何らかの形でフランス大使館に持ち込み、それに代わる新たなパスポートを発行してもらい、それによって出国するというようなことがあったのではないかと、個人的には推察する。
また、レバノン政府の受け入れ体制が事前に確認できなければ、15億円の保釈金をドブに捨てるような真似はしなかっただろう。
レバノン政府は関与を否定しているが、関与していなかったと考えるほうが不合理である。
ワルは個人だけではない。政府だってワル知恵を存分に働かすことは当たり前の話だ。それが国益と繋がるなら、なおさらだ。
ゴーン被告は妻との接触は禁じられていたが、娘との接触は禁じられておらず、娘とは国内旅行にも出かけている。
つまり、妻との間でも娘を通じるなどして、間接的には様々な相談が割とフリーにできる状態にあった。(但し、娘は前妻の子ではあるが。)
ゴーン 被告は、日本は基本的人権が守られていない国で、政治的迫害があり、差別が横行しているとの批判を行ったが、実際には性善説的な立場から保釈形態はゆるゆるで、ワルがワル知恵を働かせればザルでしかないことを露呈させた。
被疑者に事実を曲げるような誘導や脅迫があってはならないだろうが、処罰すべき人間には処罰を受けさせるということが基本に置かれ、法的な正義の実現こそが最重要視されならなければならない。
被疑者の「人権」がなし崩し的に重視される中で、本来は司法に求められているこうした精神がおざなりになっていることを、今回の事件は浮き彫りにしたとは言えないだろうか。
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これのネタ元のNHKの記事
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200102/k10012233951000.html
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