ハンガリー議会は、中国の融資で実施する、ハンガリーの首都のブダペストとセルビアの首都のベオグラードを結ぶ高速鉄道事業の詳細を、向こう10年間にわたって機密扱いとする法案を可決した。
このプロジェクトは、すでに両首都を結んでいる既存の鉄道路線を更新するもので、ギリシャで中国が運営するピレウス港につながる鉄道路線と接続される予定だ。
つまり、中国と海運で結ばれたギリシャを起点に、ギリシャ・マケドニア・セルビア・ハンガリーを鉄道で結ぶというもので、将来的にはここからさらに西欧とも接続することも計画しているとされる。
内陸国であるハンガリーには、海運と接続できるこのプロジェクトの持つ意義が大きいのは確かだろうが、プロジェクトは中国の一帯一路構想の一環でもあり、これによって中国のEU内でのプレゼンスが非常に大きなものとなるのは間違いない。
ハンガリーはこの事業の投資費用の85%にあたると推計される20億ユーロ(約2400億円)ほどを中国輸出入銀行から借り入れ、残りの15%を自己資金で賄うと言われている。
だが、詳細は全くわからない。
契約内容は秘密とされているからだ。
契約の詳細を開示すれば「ハンガリーが外国から不当な影響を受けずに外交政策や貿易利益を追求する能力が脅かされる」恐れがあるとのことだが、他国を犠牲にするような非倫理的な内容になっているということだろうか。
EUを裏切るような内容が含まれているということだろうか。
ともかく、中国輸出入銀行から必要な資金の融資を受けるには、事業詳細を機密にする必要があり、プロジェクト関連文書の開示には、中華人民共和国政府の同意が必要になっているとされる。
ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、ハンガリーがまだ社会主義国であった時に、ソ連軍の駐留とハンガリー社会主義労働者党の一党独裁を批判した反共の闘士だった人物ではあるが、シンガポールや中国のほうが西側諸国よりもうまい国家・経済運営をしているとも考えている。
鉄道建設の一部をオルバン首相に近い企業が担うとの噂もあるが、それだけでこの契約に邁進しているとは考えにくい。
心配なのは、この投資が中国の債務の罠に引っかかる恐れがないかということであり、ハンガリーの国家主権が中国の影響を受けざるをえなくなる事態が生じないかということだ。
そしてまた、EUの独立性にも大きな影響を及ぼす事態にならないかということだ。
今後のEUの結束が守られるかどうかという点でも、看過できない。
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