今回の記事は「松尾利昭」さんの寄稿記事です。論拠がしっかりしていて、一方的な決めつけがなく、反対意見の人たちを罵倒するようなものでないといった基準に合致していれば、寄稿記事も歓迎しています。ぜひお読みください。
政府は10月22日新たなエネルギー基本計画を閣議決定し、2030年度の温室効果ガスの排出量を、13年度比46%削減する目標に向け、電源構成を再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、水素・アンモニア1%、及び火力41%とする目標を定めた。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーにはバックアップ電源が必要である。日が照らない時に無風状態だとすれば、発電ができないことになるからだ。こういう場合のバックアップ電源には再生可能エネルギーの発電量に合わせて出力調整できる火力発電が最もふさわしいことになるが、「脱炭素」を前提とするなら原発以外に有力な選択肢はない。
各国の指導者たちも脱炭素を実現するためには、原発を主要電源にせざるをえないことに気がつき始めている。
仏のマクロン大統領は2030年までに10億ユーロ(約1300億円)を投資し、小型モジュール炉(SMR)の開発を目指すことを発表した。さらに、加圧水型原子炉を最大6基建設する計画も明らかにした。原子力はフランスの基幹製造技術であるため今後も必要な技術であり、その再編成は政策目標の第一番目に位置付けられ、継続的に開発していくことは非常に重要だとの認識も示している。
マクロン大統領は天然ガスの価格上昇により仏国民の生活が大きな影響を受けていることを問題視し、「国民がもしも、適切なレベルのエネルギー料金を支払い、外国から輸入するエネルギーへの依存を下げたいのであれば、我々は省エネを続けるだけでなく、国内で低炭素エネルギー源の建設に向けた投資を行わねばならない」と述べた。ここで言う「低炭素エネルギー源」には原子力発電が多く含まれるのは言うまでもない。
エネルギー価格の高騰などを背景に、欧州委員会フォンデアライアン欧州委員会委員長も記者会見で、「我々には安定的なエネルギー源である原発が必要である」と強調した。
中国はロシアとの技術協力を深めている。本年5月にはロシアが設計した原発4基の建設に着手した。ちなみに現在中国で建設中の原発は16基で、計画中は39基である。
米バイデン政権はルーマニア政府と協力し、同国に米ニュースケール・パス製SMR12基を導入する計画を進めると発表した。海外で導入実績をつくり、SMRの国際競争で先行する狙いである。
カナダは日立製作所と米GEが共同出資するGE日立ニュークリア・エナジーにSMRを発注した。出力30万KWHで、2028年完成予定である。
このように世界が原発拡大に動き出しているなかで、日本の状況はどうか。
今月初め、四国電力の伊方原発3号機が2年ぶりに運転を再開したが、日本の稼働している原発は今なお10基にすぎない。エネルギー基本計画では30年度原子力20~22%であるが、現状は6%にすぎないのである。原発再稼働計画が不明確で、国民は大きな電力料金の負担を強いられている。再生可能エネルギーで電気料金に上乗せされる「賦課金」は、21年度2.7兆円で、一般家庭で一世帯当たり年間1万円になる見込みで、再エネ拡大で負担はさらに拡大することが予想される。
太陽光発電では乱開発で土砂崩れなどの災害が問題となっている。このため太陽光発電施設などの再エネ関連施設の設置に抑制的な条例を制定する自治体が急増している。2016年度に26件だった条例の制定件数は2020年度には134件にまで増えた。
さて現在、脱炭素に関連して日本が優位に立てる可能性があるのが水素に関連する技術である。エネルギー源となる水素を安全に安価に製造する方法として期待されているのが次世代原子炉・高温ガス炉(HTR)である。
日本の高温ガス炉は茨城県大洗町に立地する原子力機構にあり、「高温工学試験研究炉(HTTR)」と呼ばれる。高温ガス炉(HTR)は減速材に黒鉛を用いることにより900度以上の高温の熱エネルギーを利用することができる発電効率の高い原子炉である。冷却材にはヘリウムガスを使用しているが、ヘリウムガスは極めて安定していて化学反応性が皆無に近い。つまり安全性が極めて高いのである。仮に配管が破損して冷却材のヘリウムガスがなくなるような事故が起きても、炉心で発生する熱は原子炉の容器表面から自然に放熱され、燃料が破損する心配もない。つまり炉心溶融などの大規模な放射能放出事故が起きる可能性は原理上ないのである。
この発電過程で生まれる高温熱を利用してヨウ素、硫黄の化学反応を組み合わせて水を分解する「ISプロセス」を働かせることができる。つまり、水を分解して酸素と水素を取り出すことができるのである。この水素製造はかなり安価に済ますことができると考えられている。
HTTRは1998年に運転を開始したが、福島事故以来休止していた。昨年6月に新規制基準への適合が認められ、工事等を実施して今年7月運転を再開した。
HTRは日本を救う技術になる可能性を有している。今、人と金を投入すべき最も重要な技術の一つである。
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原子力産業新聞の記事
https://www.jaif.or.jp/journal/oversea/10548.html
時事通信の記事
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021102300436&g=int
www.iza.ne.jpの記事
https://www.iza.ne.jp/article/20211103-E6HSA64MU5IZ7KQDAXPZBSFCQU/
高温ガス炉の画像
https://www.jaea.go.jp/04/o-arai/research/images/img_research06.jpg
再エネ施設設置に抑制的な条例を持つ自治体数
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