安全保障

自衛隊の派遣を前向きに進めよ! アフガニスタン!(朝香 豊)


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アフガニスタンから、大使館職員や民間人の国外退避を進めている米政府が、日本政府に自衛隊の派遣を含めた協力を要請していることがわかった。

私はこれについて積極的に応じるべきだとの立場だが、これに反対する意見も多い。恐らくその第一は、「法律上の根拠がない」というものだと思われる。ところが果たしてそうなのだろうか。

自衛隊法第八十四条の三は、「在外邦人等の保護措置」を定めていて、外国で緊急事態が発生して外務大臣から防衛大臣に依頼があった場合には、在外邦人等の保護処置を取ることができるとされている。同様に、第八十四条の四には「在外邦人等の輸送」を定めている。

問題はこの発動要件に「当該外国の権限ある当局」が同意し、連携及び協力が確保されると見込まれ、戦闘行為が行われることがないと認められることとなっているところだ。ここに書かれているのは「外国政府」ではなく、「権限ある当局」である。日本政府が合法政権として認めていなくても、現地を実効支配しているタリバンを「権限ある当局」だとみなすことは決して難しいことではない。

我が国の国民らが現地からの退避を求めているので、タリバンはその退避に協力をしていただきたいと申し出ればよいだけだ。タリバンは少なくとも建前では外国人の安全を認めていて、テロの廃絶も訴えているのだから、この日本政府の申し出を拒絶する理由はないだろう。

日本政府はタリバンとコソコソと交渉するのではなく、堂々とオープンに邦人退避を申し出ればいい。国民にも国際社会にもオープンに知らせることが極めて重要だ。この動きに出た場合に、タリバンの主張が建前にすぎないのか、実質を伴うものなのかがまず明らかになる。

こうなると国内の野党とマスコミは「自衛隊法の拡大解釈だ」とか「憲法違反の海外派兵だ」といって、狂ったような大騒ぎを始めるだろう。そしてその時に一般国民はどう感じるだろうか。タリバンと戦争をしにアフガニスタンに行くわけではないのに、どうして自衛隊の出動が認められないのかと、素朴に感じるのではないだろうか。あくまでも相手側が認めることを条件にしながら、邦人保護のために自衛隊が出ていく話をしているだけである。

もちろん現地に自衛隊が派遣されれば、自衛官を危険に晒すことになるのは間違いない。タリバンが一枚岩の組織ではないこともあり、現実には問題が起きる可能性も大いに想定しなければならない。タリバン側が約束を履行しないことによって、自衛官らに負傷者などが出ることもあるかもしれない。その時に野党とマスコミはさらに狂った大騒ぎをするだろうが、そうなればなおさら、彼らは素朴な国民感情から離反していくことになる。

また退避に際しては、まずは邦人を最優先して進めることから始め、邦人退避が完了したら、友好国の国民や現地スタッフの退避まで範囲を広げられないかの交渉を始める。友好国の国民については自衛隊法から逸脱しているという指摘もあるだろうが、人道性と緊急性から敢えて訴えてみて、国内の議論を沸かせること自体を目的化する。

交渉の中でどこまで認められることになるかについては正直言えば絶望的だが、日本政府が最大限の努力を行ったことを国際社会にアピールできることがもっとも重要なところだ。これにより、タリバンの規範意識がどの程度なのかを明らかにすることもできる。それと同時に、野党とマスコミに国民意識から完全に遊離した話を展開させるところが重要だ。

日本政府は遵法精神と道理に基づいた路線を堂々と世界に示せばよい。タリバン側の反応により、自衛隊の派遣が結果として全くできなかったとしても、邦人救出のために最大限の努力を日本政府が払ったことを示すこと自体に大きな意味があるのではないか。

そしてそれが自衛隊法改正や憲法改正の大きな後押しになることを、我々は見落とすべきではないだろう。

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