レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告の主張を鵜呑みにし、日本叩きを行うマスコミの先頭に、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルがある。
ウォール・ストリート・ジャーナルは「共産党が支配する中国の話であろうか。いや、資本主義の日本で起きたことだ」、「日本の検察のやり方は、有罪を認めるまで容疑者を拘束し、弁護士の立ち会いなしに尋問する。裁判は基本的に形式的なもので、あらかじめ有罪は決まっている」、「日本の不透明な企業統治と法に基づくデュープロセスの欠如を白日の下に晒した」、「日本が現代的な自由市場経済によりふさわしくなるよう司法制度と企業統治を改革することが正義を果たす最善の方法である」と、徹底的に日本をこき下ろした。
歳川隆雄氏は、日本の裁判では有罪率99%を超えており、とても公平とは言えないと言われているが、アメリカでも司法取引による有罪答弁も含めれば、有罪率は99%超になることを指摘した。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、このアメリカの実際を無視して、日本叩きを行っているわけだ。
氏のこの指摘はさすがである。
ただ、歳川氏は、取り調べに弁護士の同席が認められないのは米、英、仏、独、伊、韓など主要国で日本のみだとし、この点については「日本は人質司法」と呼ばれる所以だとしている。
ここについては氏に反論したい。
それだからという理由で日本が「人質司法」と呼べるかどうかは、自分には疑問である。
日本では取り調べの録音・録画が行われており、被告の人権にも十分配慮しているとも言えるからだ。
取り調べのやり方は国ごとに特徴があるのは当然であり、欧米の基準ですべてを判断するのが正しいとは思わない。
そもそも日本では捜査において盗聴が許されるのは極めて限定されていて、ゴーン被告の疑いでは利用ができない。このあたりでは欧米とはかなり大きな違いがある。
日本では現行犯でない限りは逮捕令状を裁判所が認めないと逮捕できないが、アメリカでは犯罪を犯しているという十分な証拠がなくても、警察官の判断で危険性があるとみなした場合には、令状なしに逮捕できる。
日本の捜査や裁判のあり方に問題点もあるだろうが、それに対して論ずる場合にも、日本社会により適合したシステムを考えていくという観点から考察すべきだと考える。
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