クウェートで3人、オマーンで2人、バーレーンとイラクで1人ずつ、24日に新型コロナウイルスの感染が初めて確認された。
この7人の感染者に共通しているのは、イランへの渡航歴があることだ。
ところでイランでは、公式にはこれまで61人の感染が確認されていて、そのうち12人が亡くなったとしている。
この数字を頭から信じるわけにはいかないだろう。
4カ国に行った7人は全員イランで感染したと推論されるわけだから、イラン国内にはもっと多くの感染者がいるはずだ。
そもそも12人が亡くなっているのであれば、感染者が61人に留まるはずはなかろう。
そんなことを思っていたら、さらに強烈な情報が出てきた。
イラン国内のゴム市(Qom)だけで50人が亡くなっているというのだ。
しかも、準国営のILNA通信社がこれを報じているという。
これが正しいとすれば、イラン政府自体は当然ながらこうした情報を持ちながら、敢えて感染者が61人で死者が12人だと伝えているということになる。
ではなぜか。
イランでは21日に国会議員選挙が行われた。
この国会議員選挙では、現役の国会議員81人を含めて、7000人以上の立候補予定者から立候補の資格が取り上げられ、ハメネイ師に近い保守強硬派が圧倒的に有利な中で行われた。
ハメネイ師としては、自分たちが国民の多数派に信任されていると演出するためには、なるべく高い投票率を確保したかった。
だから、ハメネイ師は、投票は「宗教上の義務」とまで言った。
だが、投票率は42.57%にとどまり、ホメイニ革命後の最低を記録した。
首都テヘランでは、わずかに25%だった。
自分たちが擁立する候補者を圧倒的に有利にしようとするハメネイ師のやり方に、白けた国民が投票に行かなかったためだ。
ともあれ、なるべく高い投票率を確保するためには、投票率をあげるのに邪魔な情報は遮断する必要がある。
だから、新型コロナウイルスの蔓延状況を正しく国民に伝えるわけにはいかないというのが、ハメネイ師の判断だったのだろう。
投票に出かければ、多くの人が集まる場に行くことになるから、感染する恐れが高いことになる。
それを知ったら、国民は投票に行ってくれなくなるだろう。
だから、国内の新型コロナウイルスの蔓延状況を投票が終わるまでは完全にごまかし、投票後に徐々に数字を大きくしていく作戦だったのではないかと思う。
投票前の段階でのイランの公式発表では、感染者5名で死者が2名だったはずだ。
ここから選挙後にどんどん数字を増やしていって、感染者61名で死者は12名というところまで持っていった。
だが、ILNA通信社の「裏切り」によって、実際にはゴム市だけで50人がすでに亡くなっているくらいに感染が広がっていることが明らかにされた。
こうなると、これはウクライナ機の撃墜に関する嘘どころではない。
ハメネイ師らが自分たちの政治的な目的を達成するために、国民の間で感染が広がることを承知の上で、すなわち国民の命を敢えて危険に晒しながら、本当の情報を隠蔽していたことになるわけだ。
これが国民の怒りに火をつけないわけがない。
こうして見ると、イランのハメネイ体制はこれで終わりを迎えるのは確実ではないかと思う。
イラン経由で感染者が流入したことで、周辺国はイランとの行き来を停止させた。
アメリカ主導の経済制裁に苦しんでいる中で、周辺国との密かな交易まで滞るとすれば、このことがイラン経済に与える影響は甚大だ。
さらに、イラン国内では新型コロナウイルスの患者がどんどん広がっており、これに現政権が有効に対処するのは甚だ難しいことになるだろう。
ハメネイ体制が今後国民から信頼を勝ち取る選択肢は全くない。
当面は感染を恐れてデモなどの集団行動は起こせないだろうが、人々の中には現政権を許せないという気持ちは高まっていくはずだ。
これ以外の展開は、残念ながら見通せない。
そしてイランのハメネイ体制が終わりに向かえば、これが北朝鮮や中国に影響を及ぼさないわけがない。
世界は激動の時代に入ったのだろう。
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https://www.aljazeera.com/news/2020/02/iran-announces-lowest-voter-turnout-1979-200223135348311.html
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