国家安全法によって設置が決まった「国家安全維持委員会」の第1回目の会合が開かれ、香港の国家安全法の危険性がさらに強化された。
強化された第1点は、特別な事情がある場合には、警察権力が裁判所の令状なく各所への捜索ができることを認めたことだ。
令状を取ることすらなく、いきなり乗り込んで各種資料などを押収することが可能になるということになる。
国家安全法違反を口実に外国企業に乗り込み、関連資料の押収と称して企業秘密を持っていくようなことさえ行える可能性も考えなければならない。
強化された第2点は、警察権力は、インターネット系の企業にコンテンツの削除を命じたり、その設備の差し押さえができるとしたことだ。
インターネット系の企業というのは、Facebook、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディアはもちろん、各種のニュースサイトなども含まれると思われるが、ここに中国政府にとって都合の悪い情報が掲載されれば、そうした情報の削除を求めることができるとしているわけだ。
例えば私たちがFacebookに中国政府に都合の悪い内容の投稿を行った場合に、Facebook側はこうした内容を削除しなければならないということになるかもしれない。
Facebookがこの規制から逃れようとすれば、香港から撤退し、香港ではユーザー登録もアクセスもできないようにしないといけなくなりそうだ。
反中国的なニュースを扱っているニュースサイトに対しても、ニュースの削除を求めることができるということなのだろう。
ただ、削除ができるとしただけでは、削除された後に再びアップすることもできるわけで、それだけでは不十分だと考えたのだ思われる。
さらにその情報アップをするのに使ったパソコンとかサーバとかの差し押さえができるとすることで、二度と反中国的な情報をアップすることができないようにするということまで規定しているわけだ。
強化された第3点は、香港の外部で運営されている政治的なグループに対して、情報を要求できるとしたことだ。
ここで求められる情報とは、グループの活動内容だけでなく、詳細な個人情報、資産、収入、収入源などを含む。
海外を拠点とした反中国的な動きを牽制するための圧力だろうと思われるが、「政治的なグループ」の範囲が曖昧なために、どこまで拡大解釈されるかわからない危険性がある。
強化された第4点は、香港の行政長官の認可があれば、あらゆる通信傍受も秘密捜査活動も認められるとしている点だ。
盗聴もメールのやり取りなども、合法的に全部筒抜けにできるとしているわけだ。
これは反中國的な運動だけでなく、企業活動にも脅威だろう。
強化された第5点は、捜査中の被疑者が香港を離れることができないように制限を加えたり、被疑者の持つ財産を凍結・差し押さえすることもできるとしている。
香港の民主主義のために動いてきた周庭(アグネス・チョウ)さんや黄之峰(ジョシュア・ウォン)さんらが香港を離れて、活動拠点を海外に求めようとしても、これを認めないとすることができるわけだ。
こうした規定が、法律自体を改正する手続きによらずに、「国家安全維持委員会」の会合だけで新たに決められるというのは、恐るべきことだ。
しかも、こうした規定が香港だけを対象としているわけではなく、外国にまで広く及ぶようにしているため、我々もまた無関係ではいられない。
悪用されれば、企業情報さえ合法的に抜き取れることにもなりうる。
香港を含めて中国と関わりを持つ場合の危険が、より一層明確になったといえるだろう。
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