川口マーン恵美氏が産経新聞に寄せた「メルケルの仮面 ドイツはなぜ左傾化したのか」を面白く読ませてもらった。ここでは川口マーン恵美氏が書いた記事通りではなく、自分なりの味付けをつけていくので、ここに書かれているのが川口マーン恵美氏の主張通りだとは思わないでもらいたい。
ドイツの2大政党は保守派のCDU(キリスト教民主同盟)と穏健左派のSPD(ドイツ社会民主党)だったが、両者が連立政権を組み、SPDが望む左派的な政策をCDUが丸呑みする中で、SPDの独自性が失われてSPDが没落した。この基本的な流れは、川口マーン恵美氏がこれまで繰り返し述べてきたところでもあり、目新しいものではない。それでも、CDUとSPDの連立政権の中で、脱原発、難民の無制限受け入れ、年金の大幅引き上げ、同性婚の完全合法化などの左翼政策が実現したことの確認は重要だと思う。
というのは、こうした政策が「民主主義」の前提とされ、これに異議を唱えることは「反民主主義」とか「反人道」だとして口を塞がれるような社会に変容してきているからだ。
もともとメディアには左派が強い流れがあるが、メルケル首相が左派に強い理解を示す方向へと舵を切ったことで、主要メディアはメルケル批判をしなくなった。メディアは政権批判ではなく、メルケル政権と一体となって「反民主主義勢力」批判に没頭している。保守派の支持を失ったCDUは没落したが、メディアの批判が少ない中で、メルケル人気は依然として高いという奇妙なねじれが生じている。
メルケル路線の中でCDUが左傾化することに反発した保守派は、新興政党であるAfD(ドイツのための選択肢)の支持に回ったが、上記の流れの中でAfDは「極右」の「反民主主義勢力」だというレッテルを貼られて、連邦憲法擁護庁による監視対象に加えられた。これによって「右」の選択肢がドイツから奪われつつある。AfDは今や解党の危機に直面しているのである。
その一方で左派のSPDよりも過激な左派志向を持つ緑の党が支持を伸ばしている。一昔前までは水と油の関係だと思われた緑の党とCDUが、連立を組むかもしれない流れになっている。CDUが連立を拒絶すれば、緑の党、SPDを中心とする左派連合が政権を樹立することになるが、そうなるとドイツの左傾化はさらに進むことになる。これを阻むという建前でCDUが緑の党と連立を組むことはありうるというのが川口マーン恵美氏の見立てだ。CDUが連立を組もうが組まいが、ドイツの左傾化は避けられない。
この話を読みながら、アメリカや日本のことを考えていた。移民は合法移民しか認めず、不法移民は排除するという当たり前の主張を展開することが、「反民主主義」であり「反人道」だとして、トランプはマスコミに徹底的に叩かれた。同様の思想傾向は日本にもあるだろう。マスコミには特定の立場が「民主主義の正解」としてあらかじめ存在し、それ以外の見解は「民主主義の敵」だとみなして排除する動きがある。
アメリカの大統領選挙においては、バイデンが中国やウクライナの闇勢力と黒いつながりを持つのではないかとか、痴呆症が進んでいるのではないかという疑惑は、マスコミによって徹底的に隠された。反トランプが正解であり「民主主義」の立場だとされ、親トランプは「民主主義の敵」であるかのように扱われた。
現在バイデン政権になって、さらにおかしなことが展開している。バイデン政権のサキ報道官は、マスコミから事前に質問したい事項を尋ね、許可したものしか質問できないようにしている。こんな中国共産党みたいなことが行われながら、肝心のアメリカのマスコミはこれをほとんど批判していない。彼らにはバイデン政権は「民主主義の味方」であり、トランプは「民主主義の敵」なので、「民主主義の敵」を利するような「民主主義の味方」の批判は差し控えるのが正解だということのようだ。これほど民主主義にとっておかしな話はないだろう。
自民党も公明党との連立を組む中で、リベラル的な政策を展開して保守らしさを失っていった。その結果として政治の世界での保守的な考えの影響力は今ひとつである。
私たちの主敵はメディアであり、ここを正常化するためにはトランプのように徹底的に戦うしか道はないのではないか。確かにトランプはその戦いに一旦は破れたが、次なる戦いに向かっての動きは活発に動いていて、共和党内部はトランプ抜きでは動けなくなっている。アメリカには新しい政治の風が吹き始めた。
そんなことを思っている。
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メルケル首相の画像
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