楽天は日本郵政と中国のテンセントとの提携を進め、中国のテンセントから657億円にものぼる出資を受け入れた。加藤勝信官房長官は、個人情報の中国への流出を防ぐよう求め、楽天がこれを受け入れた形にはなっているが、どのような情報流出防止策が取られたのかについて、楽天は国民に説明すべきではないだろうか。
ネット通販において日本国内でのシェアの大きな楽天が日本郵政と手を組むことは、物流網の構築という観点で見て、楽天に大きなメリットがあることは明白である。日本郵政にしても楽天の配送に傘下の日本郵便がしっかり食い込めることには業務上大きなメリットがある。これによってアマゾンに対抗していこうというのは、日本資本を守る上で高い意義があることは認められる。
楽天は携帯電話事業に参入したものの、先行投資に膨大な費用が掛かっており、資金ショートぎみである。携帯電話事業を離陸させるためには、さらなる投資を進めなくてはならない。すでに携帯電話事業で十分なキャッシュを集められるようになっている3大キャリアと比べて、現在楽天は圧倒的に不利な状況に置かれている。
日本郵政は政府が過半を出資する企業であり、ここが特定の私企業である楽天に肩入れすることを問題視する論調もあるが、外資であるアマゾンに対抗できるネット通販が存在すること、また携帯電話事業を営む会社が増えて競争条件が高まることは、現段階の日本にとってはより重要なことではないかと、私には感じられる。
だがその一方で中国のテンセントの出資の受け入れは容認し難い。テンセントはメッセンジャーアプリのWeChatなどで知られる中国の通信大手である。「ホワイトハッカー」として活躍して、ハッキング技術を磨いていることでも知られる。
楽天は日本郵政とのデータ共有による物流プラットフォームを構築することを計画しているようだが、このプラットフォームには日本郵便の持つ住所情報のみならず、ゆうちょ銀行やかんぽ生命などの金融データも含まれることになるのかもしれない。ここに中国のテンセントが絡むことはどう考えても好ましいこととは思えない。
楽天はテンセントを通じて国境を超えた電子商取引網の構築を狙っていると思われるが、この提携の中で日本郵便との間でのデータ共有の仕組みにテンセントが入り込むことの懸念は非常に重大だ。
改正外為法で安全保障上の脅威となる買収や資本参加は大きく制限されるようになったと言われているが、実際にはまだまだ甘いところがある。相手が国有企業でなければ、10%以下の出資であれば事前の届け出をしなくてもいいことになっているから、3.65%にとどまるテンセントの出資は外為法上はなんの問題もないことになる。
だが、そもそもテンセントを純粋な民間企業だとみなすことに問題がある。中国共産党に逆らうことなど、中国の民間企業に許されるはずもないのは明らかだ。
おそらくはテンセントの投資は単純な収益目的の投資にすぎないという扱いでお茶を濁したのだろうが、今回の事態は日本が経済安全保障をどこまで真剣に考えているかの試金石にもなっただけに、テンセントの出資受け入れには落胆せざるをえない。
日本政府は楽天に資本を投入できる先を用意して、今からでもテンセントの出資を引き上げさせるようにすべきではないだろうか。
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テンセントの画像
https://www.sankeibiz.jp/images/news/210329/bsj2103291837006-p1.jpg
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