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コロナ対策でEU内が分裂! 高まる相互不信!(朝香 豊)


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欧州全域に広がる新型コロナウイルスの萬延に対して、イタリアのコンテ首相が「EU共同債」の発行を提案した。

「イタリア国債」であればイタリア政府の借金となるが、「EU共同債」になればEU全体の借金ということになり、イタリア政府とかスペイン政府とかの特定の政府の借金にはならない。

今回のコロナウイルスで甚大な被害を受けているのは、イタリアとスペインに限った話ではないし、ヨーロッパ全体で対処すべきものだというコンテ首相の言い分にも、十分な理由はある。

実際にEU圏内でも14カ国がこのコンテ首相の提案に賛成し、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も前向きな姿勢を見せている。

だが、イタリアの被害はイタリアが負い、スペインの被害はスペインが負い、ドイツの被害はドイツが負うということにしたほうが、ドイツからしてみれば、負担が少ないように感じられる。

コンテ首相が「EU共同債」の提案をしたことに、ドイツのメルケル首相は一旦は理解する姿勢を見せたが、ショルツ財務相はメルケル発言を修正し、「EU共同債」は適当ではないとの見解を示した。

その代わりとして、欧州版のIMFともいえる「欧州安定メカニズム(ESM)」からの借り入れを使うことを提案した。

オランダもドイツと同じ立場に立っている。

だが、ESMからの融資はIMFによる融資と同じように、借り入れに際しての条件が非常に厳しい。

ギリシャ危機の際にギリシャはものすごく激しい緊縮財政を要求され、27.9%という高い失業率に苦しむことになった。

若年層に限っては50%を超えていた。

ESMから借り入れた結果として、コロナ危機が去った後に経済を立て直す財政的な余裕が全くなくなり、激しい緊縮財政を求められるということになったら、当然にもイタリアやスペインはやっていけないだろう。

ドイツやオランダの厳しい姿勢は、こういう点で非合理なものではあるが、しかしながら、イタリアやスペインを助けるような提案を認めると、国内の選挙でドイツ国民から支持してもらえなくなるという問題があるところも着目しておくべきだ。

イタリア人やスペイン人のことを可哀想だと思っても、彼らのために負担を引き受けようとは、ドイツ人は思わないものだ。

ドイツ人は「ドイツ人」というアイデンティティは持ちえても、「ヨーロッパ人」というアイデンティティはなかなか持ちえない。

それは私たち日本人が「日本人」というアイデンティティは持ちえても、「東アジア人」というアイデンティティはなかなか持ちえないのと同じだ。

そういう点から考えて、ドイツやオランダの反対姿勢は理解できるのだが、ただここでどうすべきかの対応がなかなか決まらないと、イタリアやスペインの国内対応は当然なかなか進めにくいことになる。

今は新型コロナウイルスの対応に全力を注ぐべき時なのに、ヨーロッパの国々の間の相互不信が募っていくことになるのだろう。

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