アメリカのバイデン政権が対中投資の禁止企業を59社に拡大したことが6月3日に報じられた。トランプ政権の時の31社から倍増近くに達した形となる。親中的なバイデン政権であっても、国内世論に押されて対中強硬路線に転じざるをえなくなったかと考え、この動きを私は歓迎していたが、とんだ食わせ物であったことがわかった。
中国ウォッチャーの遠藤誉氏によれば、追加された企業の大半はすでに制裁対象となっている企業の子会社とか親会社といった関連会社であり、実質的にはほとんど増えていないことになる。
実質的に追加されたと言えるのは「安徽長城軍工股分有限公司」「長沙景嘉微電子股份有限公司」「福建火炬电子科技股份有限公司」の3つであるが、この3つはもともと中国政府が外国からの投資を認めていないものである。とすれば、追加しても意味は全くない。
この投資禁止リスト発表に先立つ5月27日に、中国の劉鶴副首相はアメリカ通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表とオンラインで会談し、さらに6月2日にもジャネット・イエレン財務長官とやはりオンライン会談を行っている。この両会談について新華社は「双方とも平等と相互尊重の姿勢に基づき、マクロ経済的視点と多国主義という視点から広範囲にわたる協力を約束し、今後も連携を保つことを望んだ。非常に率直な意見交換ができた」と高く評価した。そして劉鶴ーイエレン会談の翌日に発表されたのがこの対中投資の禁止企業リスト「拡充」の発表であった。こうしたオンラインの会談を通じて、バイデン政権は投資禁止リストの調整を中国側とすり合わせていたと考えるほうが自然である。こういう点からすれば、「出来レース」だったと言うこともできる。
さらに注目すべきことは、「中国航空集団有限公司」「中国化工集団有限公司」「曙光資訊産業股份有限公司」など18企業がブラックリストから解除されているところだ。ちなみに「曙光」は中国スーパーコンピュータ大手で、中国人民解放軍と密接なつながりを持ち、中国の核兵器や極超音速兵器のプロジェクトに関わっている。このような会社がなぜ投資禁止リストから排除されたのかは、大いに疑問だ。
こうなると、実質的には制裁対象の大幅拡充どころか、制裁対象の骨抜きであることになる。
トランプ政権はTikTokやウィーチャットのアメリカ国内での使用禁止を決めたが、バイデン政権は6月9日にこの使用禁止処置を撤廃することも行っている。
バイデン政権には今後も警戒心を緩めてはならない。
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バイデンと中国の画像
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