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中国政府は、中国の国外で研究を行っている研究者を集める人材募集プログラムを様々に展開している。
そうしたプログラムはなんと200もある。
こうしたプログラムを通じて、アメリカ政府の研究資金と、アメリカの民間部門の技術が、中国の軍事力と経済力を強化するために使われていることに、アメリカ政府は危機感を抱いている。
まだまだ対策が甘いからだ。
米上院国土安全保障政府問題委員会調査小委員会は、8ヶ月にわたる調査を行い、この点を指摘した報告を超党派でまとめ、公表した。
中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指している。
そのために海外の研究者を募集して、国内の研究を促進している。
そのためのプログラムでもっとも有名なのは「千人計画」(海外高層次人才引進計画)だ。
「千人計画」と呼ばれているが、2017年までに7000人の研究者を集めたとされている。
潤沢な研究資金や報酬などを用意し、こういう研究者を集めているわけだ。
ハーバード大学のチャールズ・リーバー教授は、化学生物学部の学部長で、ナノテクノロジーの分野の世界的権威であり、ノーベル賞候補とも言われている。
このリーバー教授が、こうした中国の「千人計画」に参加していながら、このことをハーバード大学にもアメリカ政府にも秘匿し、米捜査当局に虚偽の説明を行った疑いがかけられている。
米司法省はリーバー教授を訴追した。
リーバー教授の研究には、米国防総省や国立衛生研究所から計1500万ドル(約16億4千万円)超の研究費が提供されていた。
リーバー教授は2011年に、ハーバード大学にもアメリカ政府にも知らせないまま、中国の武漢理工大学の科学者にもなった。
リーバー教授は武漢理工大学でも研究を行う対価として、月給5万ドル(約550万円)と、生活費として上限15万8000ドル(約1700万円)が与えられていたとされる。
武漢理工大学はさらに大学でのリーバー教授用の研究所の設立費用として150万ドル(約1億6500万円)を超える支援を受けていた。
「千人計画」では、科学者たちが自国で行っている研究を忠実に再現できる「影の研究室」を中国に設立することを奨励している。
これにより、中国は他国で行っている研究がどういうものなのかを、どこよりも早く知ることができるようになっているわけだ。
当然、アメリカの第一線の科学者がアメリカでどういう研究を進めているかも知ることができる。
リーバー教授用の研究所もそのようなものだったのだろうと推測されている。
「千人計画」で結ばれる契約書には、中国のために働くこと、契約を秘密にすること、中国人のポスドクを募集して一緒に研究をすること、スポンサーになる中国の研究機関に全ての知的財産権を譲り渡すことを求めている。
報告書は、米国立研究所に所属していたあるポスドク研究員が、千人計画に選ばれて中国で教授職を得た際の話について触れている。
この研究員は中国に対して、自分の研究分野は高度な防衛力を持つために重要なものだと話し、中国の防衛力の近代化を支援する研究を計画し、この研究所から3万件の電子ファイルを持ち去って中国に渡った。
こうした中国のあり方に対するFBIや米国の研究機関の対応は非常に遅いことを、報告書は問題視している。
中国に限らず、外国の人材募集プログラムに参加している研究者には、その契約条件などを完全に開示しないままでは、米国の研究資金を得られないようにすべきではないか、などと、報告書は提言している。
報告書をまとめた調査委員会のポートマン委員長は、アメリカ政府が1985年から採用してきた基本方針はまだ甘いところがあるとして、対策を立法化することも必要だとしている。
中国がアメリカなどの知的財産を盗用するやり方は様々ある。
その中にはハッキングを行うといったことも当然あるが、このように有能な科学者を直接買収するような真似も行っている。
このことにアメリカは危機意識を持ち、アメリカの知的財産、企業秘密を中国から守るために、真剣に対応しようとしているわけだ。
さて、日本ではこういう意識を持った対策は考えられているのか。
甚だこころもとない。
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