国連人権高等弁務官事務所の職員のエマ・ライリー氏によると、同事務所は国連人権理事会に出席する中国の反体制派の名前を中国政府に事前に知らせて、反体制派本人やその家族の安全に重大な脅威を与えてきた。こうした反体制派の中にはウイグル人、チベット人、香港人なども含まれる。また、本人の出国を禁止することで、国連人権理事会に出席できないようにしている。
例えば、在ジュネーブ国際機関中国政府代表部の外交官が、2012年9月7日に送った電子メールで、「添付ファイルにある2人が、第21回国連人権理事会に出席するか確認してほしい」と国連職員に要求した事例がある。
国連職員は「2人の出席はすでに認められた」返信メールを送っている。この2人は世界ウイグル会議総裁のドルクン・エイサ氏と、中国の人権派弁護士・高智晟氏の妻の耿和氏である。
中国共産党幹部は海外にあるドルクン・エイサ氏の自宅に出向き、エイサ氏に「黙れ」と脅した。エイサ氏の兄は2016年から行方不明になり、弟は拘束されたままだとされ、母親は2018年に強制収容所で死亡した。父親も死亡したようだが、何が原因かはわからない。
2013年に中国側が送信した別のメールでは、第22回国連人権理事会に参加する反体制派の情報を要求した。このメールには「ここ数年間、人権理事会において、あなたとあなたの部署から多大なご協力をいただき大変感謝している」と書かれていた。つまり、反体制派の情報を中国が国連側から受け取ることは、慣例化していたということになる。そして実際にこのときも、国連側は同年の人権理事会に参加する4人の名前を中国側に提供した。
中国当局は国連関係者から受け取った情報を基に、反体制派の出国の阻止に動いた。中国の著名な女性人権活動家である曹順利氏はその一人で、2013年9月に北京国際空港でジュネーブに向かう途中の同氏を逮捕した。そして曹氏は2014年3月、監禁先で死亡した。
国連側が中国側に漏洩している反体制派の情報は、中国人に限らない。アメリカ人やドイツ人の情報もかなりの人数にのぼる。
なんともおぞましい話だが、国連人権理事会が中国の人権弾圧に恒常的に加担してきたわけである。
国連人権高等弁務官事務所の高官であるエリック・ティストウネット氏が、中国の「不信感」を増幅させないために、「できるだけ早く情報提供するよう」指示したメールも漏洩した。
なお、国連人権高等弁務官事務所はライリー氏の告発について、2015年にそうしたことは停止したとの「反論」を行っているが、ライリー氏は今も続いていると述べている。なお、彼女は国連人権高等弁務官事務所の職員としての給料は支払われながらも、現在は仕事を取り上げられているそうだ。人権を専門的に扱う同事務所で、このような人権無視が展開されているのである。
ちなみに国連人権理事会は昨年(2020年)10月に中国とロシアを理事国として選出している。国内の人権状況に大きな問題を抱えたこうした国が国連人権理事会の理事国に普通になれるということに、国連の闇がはっきりと表れていると言うべきだろう。国連に幻想を持つのはやめるべきである。
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国連による名前漏洩のスキャンダルの画像
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