12月9日・10日にアメリカは「民主主義サミット」を開催した。台湾が招待されたことでこれを評価する声もあるが、手放しで評価できるものだったのかは大いに疑問である。
今回アメリカ政府が発表した招待国・地域は110であり、いわゆる西側基準の民主主義国ばかりが集まったわけではない。この「民主主義サミット」は英語では Summit for Democracy(民主主義のためのサミット)となっていて「民主主義国のサミット」ではないとの説明がなされるが、それにしても参加国の顔ぶれには納得感が薄い。
例えばアジアではパキスタンやフィリピンが入る一方で、タイやシンガポールやマレーシアが除外された。確かに「民主主義サミット」の目的が中国の孤立を目的としたものであると考えた場合には、民主主義度が高いとは言えないパキスタンやフィリピンを入れるのは必ずしもおかしなことではないだろう。だがそれならタイやシンガポールやマレーシアを除外する必要性もないのではないか。客観的に考えれば、「民主主義サミット」から除外されたことで、これらの国を中国側に動かす結果につながる懸念を持つのは当然である。
あやしいのはそれだけではない。
パネル討論会中に台湾の唐鳳(オードリー・タン)IT担当大臣の説明スライド動画から画像が消され、音声だけにされるという事件もあった。南アフリカの非政府組織(NGO)であるCivicusが作成した、国・地域ごとの市民の権利の開放度を示す世界地図が表示されたあとのことである。
開放度が最も高いところは緑色、開放度が最も低いところは赤色で、緑色→黄緑色→黄色→橙色→赤色の順に色分けされていた。つまりこの図で台湾は緑色となっており、赤色で塗られた中国とは好対照になっていたわけだ。
画像が消されたのは、この色分けにホワイトハウスが敏感に反応したからであろう。ホワイトハウス側は「単なる手違い」だと台湾側には説明しているが、そんなわけはない。その後の画像には「台湾の唐鳳大臣」( Minister Audrey Tang Taiwan)の表示がなされ、さらには「この会議で出席者が表明したどの見解も出席者自身の見解であり、アメリカ政府の見方と必ずしも一致するものではない」(Any opinions expressed by individuals on this panel are those of the individual, and do not necessarily reflect the views of the United States government.)との表記も付け加わってもいるからだ。
ホワイトハウスがこの「民主主義サミット」の開催においても、いかに中国の顔色を見ながらやっているかをこの事件は露骨に表していると見るべきだろう。
そしてこれは中国が台湾に武力でちょっかいを出すようなことがあった時に、アメリカが台湾防衛に本当に乗り出すのかどうかについても不安を与えるものとなった。
さて、先日安倍元総理が「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と語ったことが問題視されたが、あれは中国に対する牽制だっただけではなく、ホワイトハウスに対する牽制でもあったのではないか。バイデン政権の本質を理解した上での危機感があの発言につながったのではないかとも感じられるのである。
ついでに言えば、対中軟弱外交を見せる日本の岸田内閣に対する牽制でもあったように感じる。
我々はアメリカのバイデン政権が大きな裏切りを行わないように、バイデン政権への監視も強めなければならないだろう。
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民主主義サミットでの台湾の唐鳳氏の示したパネルの画像
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