北京オリンピックの外交的ボイコットに関して、決断できない岸田総理の対応に対しては自民党内からも大きな反発が出ている。
自民党外交部会では佐藤正久部会長が「モタモタして意思表示を行うのは、やっぱり日本は人権より金かと(思われる)。早めに国家の意思表示、外交的ボイコットをすべきだ」との考えを明確に示した。
衆院予算委員会でも高市早苗政調会長がこの問題を問いただしたのに対して、岸田総理は「適切な時期にオリンピック・パラリンピックの趣旨・精神など諸般の事情を総合的に勘案し、国益に照らして自ら判断する」と述べるにとどめた。
政府に考えてもらわなければならないのは、重大な人権蹂躙国でのオリンピック開催の是非もあるが、参加する選手の身の安全の確保がどこまで行えるかという点もある。
オリンピックでは政治的メッセージの発信は行ってはならないとはされているが、現実には緩やかに運用されている。東京オリンピックの際にも女子サッカーの試合などで片膝をつくポーズで人種差別に反対する意思を表明することが広がったが、IOCのバッハ会長はオリンピック憲章違反には当たらないとの判断を示した。
北京オリンピックで中国の人権状況に抗議の意を示すポーズを披露するようなことが行われるのは十分に想定されるが、こうした選手の身の安全が中国で確保できるかどうかは重大な問題になる。
またワシントン・ポスト紙が「紙面や放送時間を費やし、凄惨な虐待の真実を伝えるべきだ」とメディアに呼びかけたように、今後中国での人権状況についての具体的な報道が西側メディアでは多く出てくることも予想される。これに対する「報復」として中国がオリンピックの取材陣に対する嫌がらせを行うのではないかとの懸念も実に重大である。
こういう点も含めて考えた場合には、北京でのオリンピックの開催そのものが不適切なのであり、「外交的ボイコット」どころか、開催地の変更を含めた対応が求められるとは言えないだろうか。本来「外交的ボイコット」レベルで逡巡している場合ではないのである。
さて、日本オリンピック委員会(JOC)会長で、国際オリンピック委員会(IOC)委員でもある山下泰裕氏は「私はJOC会長、IOC委員として北京に行く。それは間違いない」と明言している。山下氏の選手思いの熱い気持ちは理解できるが、選手や取材陣の自由と安全を両立させることが北京オリンピックで実現できるのかという観点も重要視してもらいたい。
そして日本政府はこういう観点から山下氏との間で意見疎通を行い、本来であれば山下氏の説得を試みるところまで行っているべきではないのか。山下氏は日本政府からは何の話もないと語っているが、これが文字通りの話だとすれば日本政府の対応はあまりにもお粗末だと言わざるをえない。
なお、河野太郎・自民党広報本部長は「中国は貿易の最大の相手国。バランスをとって考えていく必要がある。外交はかけ声でやるものではない」とし、「威勢のいいことを言っていればいいとの無責任な声が今増えていることは、大いに懸念しなければいけない」と発言した。こういう考えが中国を増長させてきたことに未だに気づけないのであれば、政治家として終わっていると言わざるをえない。
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岸田総理の画像
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