日本に一時帰国を求める在外邦人が増える中で、帰国できないトラブルが相次いでいることを日経新聞が報じた。
新型コロナウイルス感染症対策として、一定時間内のPCR検査の陰性証明書の提出を求められるのは、日本であれ諸外国であれ対応は同じだ。だが、諸外国では医療機関が発行した検査結果証明があれば入国を認めるのに対して、日本では厚生労働省が定める独自書式に基づく検査結果証明を必要とする形式を取っている。
さらに海外では医療機関がPCR検査の結果をPDFなどで電子交付することが多いのに対して、日本が求めるのは手書きでの記入である。電子交付のものを認めないことには、十分な合理性は見いだせないだろう。
日本の陰性証明は当初、鼻咽頭ぬぐい液か唾液のいずれかのみを検体として有効とし、両者の混合検体を認めてこなかった。これに対して海外では混合検体の方が主流であるため、日本政府が求める検査証明を出してくれる場所を見つけることが困難であるというトラブルもあった。
７月になって厚労省が混合検体を認めるようになったことでこの問題はようやく解決されたが、「鼻咽頭ぬぐい液」を「鼻ぬぐい液」のような書き方がされていることで正規の証明とは認められないといった、信じられないことが起こっているようだ。
在外公館では「表記が違うと搭乗や入国を拒否される可能性がある」として注意を呼びかけているそうだが、そんなことより厚労省の対応を柔軟にすることの方が遥かに大切ではないか。母国への帰国は邦人保護の観点から見ても最大限尊重されるべきもののはずだが、そういう意識は厚労省にはないのだろうか。
入国後の「自主隔離」の扱いがザルになっていることがよく指摘される一方で、こうした形式面での無駄な厳しさはどうにかならないものなのか。
厚労省としては、憲法に緊急事態条項がなく、強制隔離ができない状況下では、入国手続を厳格化しなければならないというのが理由になるのかもしれない。だが、日本国が日本国民のためにあり、海外で困っている日本人が帰国に際して非合理な扱いを受けることがあってはならないという原点を見失ってはいけないだろう。
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