経済

破綻確定の河野氏の年金改革案! かつて民主党も同じ主張を行い、謝罪している!(朝香 豊)


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自民党総裁選挙に出馬している河野氏の一番の目玉政策は年金改革である。

多くの方が誤解しているが、実は年金は破綻しない設計になっている。年金については「100年安心」が槍玉に上げられたが、あの批判は誤解に基づくものである。年金制度は100年後であっても壊れることなく制度が維持され、今払った保険料が受け取る段階で受け取れなくなるなんてことはないですよというのが「100年安心」の意味である。100歳まで生きても十分な年金によって悠々自適な暮らしができるという意味だと解釈するのは、ねじ曲げた宣伝にすぎない。

河野氏はこのあたりのことは十分に理解しているが、その上で制度を維持するために設けられている「マクロ経済スライド」を批判している。「マクロ経済スライド」とは、少子化や長寿化の進展などで現役世代が相対的に少なくなれば、年金の受取額がその分減ることになるというような調整手法のことだ。現役世代に過大な負担を負わせないための方策である。合計特殊出生率(女性が生涯に生む子供の数の平均値)がどんどん下がっていく状態になると、「マクロ経済スライド」によって年金額が削られることになるのはその通りである。この状態では年金で十分な生活保障ができないことになるというのが、河野氏の問題意識である。

だが、河野氏は危機を煽るために、年金の実際とは違うことを主張するところがある。河野氏は年金制度が破綻することはないと厚労省は言い張るけれども、年金額が月に一円になったとしても、それは制度がしっかりと維持されているから破綻ではないという議論は成り立つのかというような言い方をする。これがおかしいのは、マクロ経済スライドをやり続けたところで、年金額が月に一円になるような事態には絶対にならないからである。計算上は将来は2割程度下がることになる感じだが、これとて制度を少し手直しするだけで容易に止めることができる。

そもそもすでに合計特殊出生率は下げ止まっているし、今後政策転換によってもう少し上昇するだけでも、「マクロ経済スライド」によって将来(といっても相当後の世代になるが)年金の受取額が現在の見通しより増えることさえ考えられるのだ。勘違いされやすいのは、人口減少が止まらない限り年金は減り続けると思っている人が多いのだが、それは実際とは違う。今の見通しより改善すれば、将来の受け取りは改善することになる。

かつて平均寿命が70歳くらいの時があった。この頃は定年は55歳であり、定年後15年ほどを年金で生活していた。中卒の人も多く、社会人になるのは平均で18歳くらいであった。つまり37年間現役世代で15年ほど年金をもらうという状態だったと考えればいい。つまり、現役で働いた期間の4割に当たる期間で年金がもらえる状態だった。

現在は平均寿命が85歳くらいであり、定年が60歳とすると、年金生活の期間は25年ということになる。現在では中卒がほぼいなくなり、高卒であってもその後に専門学校に通う人も多くなった。大学院への進学も増えた現在では、社会人になる平均は22歳くらいだろう。そうすると現役世代であるのは38年で、年金をもらうのが25年ということになる。こうなると現役で働いた期間の65%に当たる期間で年金がもらえることになるので、年金財政が厳しくなるのは当然なのだ。

ではどうすればいいのか。現役を引退する年齢を70歳にし、年金の支給開始年齢が70歳になったとしてみよう。現役世代は48年に延び、年金をもらう期間は15年になる。現役で働いた期間の3割程度の期間しか年金をもらわない状態になり、これだけのことで年金財政は一気に解決するのである。

現行制度では基礎年金の払い込みは60歳までとなっているのだが、まずは希望すれば70歳まで延長するだけでも年金財政は随分と変化する。70歳まで働き、年金の受け取りは70歳からが当たり前になれば、年金問題はそれだけで解決がつくと言っても過言ではない。(なお、厚生年金は60歳を超えても75歳まで払い込みができる。)

もちろんこの状態に社会を一気に動かすことなどできないから、徐々に移行していくしかないのだが、解決の方向はすでに見えていると言ってよいのだ。

河野氏は年金未払いが多いことも問題にしているが、これもかなり誤解のある話である。河野氏に限らず「4割が未払い」というようなことがマスコミでは時々取り上げられるが、あの未払いは自営業者やフリーターなどを対象とする「1号保険」の話でしかない。保険料を支払うべき人全体からすれば、8%程度にしかならないのである。そしておそらくこの8%の人たちの中には、年金制度が将来破綻するという偽情報に惑わされて、「損するなら払うのやめよう」という人もかなりいるだろうと思われる。こういう点でもマスコミ報道の酷さは目に余るが、その点は今回は突っ込まないようにしよう。いずれにせよ、保険料未納者の続出で年金制度がもたなくなるというのはガセなのだ。

知っておくべきは、抜本改正などやらなくても年金制度は十分に維持できるし、支払い水準を引き下げないでもすむ方向性もすでにはっきりとしているのである。ところが河野氏はあたかも抜本改正が待ったなしの状況なのに、既得権にしがみついた守旧派がなかなか動かないかのように騒いでいるのだ。これはかつての民主党と同じである。

多くの人は忘れているだろうが、河野氏が今提唱している基礎年金の全額税方式はかつて民主党が主張していた内容である。まだ民主党が政権を取る前には、自分たちが政権を取ったら実現してみせると大見えを切っていた。

だが政権を取ってからは結局手をつけることがなかった。

この件について、民主党政権時に国会で面白いやり取りがあった。公明党の斉藤幹事長代行が「(現行の年金制度が)破綻している、破綻していると言って(民主党は)国民の不安を煽り、その罪は大変重いと思っております。「年金が破綻しているのかもしれない。じゃあ、もう保険料を払うのはやめようか」とか。こういうことに対しての真摯な反省、これも与野党の建設的な議論の、私は一つの大きな土台になると思いますが」と述べたのに対して、当時の岡田克也副総理は「年金制度破綻というのは、私もそれに近いことをかつて申し上げたことがございます。それは大変申し訳ないことだというふうに思っております。やや言葉が過ぎたことは間違いありません」と答えているのである。

河野氏は頑迷な守旧派を打ち破るために先頭を切る改革派のイメージを売りにしているわけだが、これがいかにまやかしであるかはこれまで私が述べたことをベースにすれば容易に理解できるだろう。河野氏の主張はかつての民主党と大差ないものでしかなく、その議論はすでに破綻が証明されている。

河野支持者には、このことを本当に理解してもらいたいものである。
  
 
 
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