ミクロネシア連邦、キリバス、ナウルの太平洋の島嶼国を光海底ケーブルで結ぶ事業計画の入札が無効になった。この計画は世界銀行とアジア開発銀行が資金を支援し、3カ国の通信事業者でつくるコンソーシアムが所有者となることを前提で進められてきたものである。入札は2020年5月に実施され、日本のNEC、フランスのアルカテル・サブマリン・ネットワークス、中国の華海通信技術が応札し、最も安い価格を提示した華海通信技術がこのまま受注するものだと見られていた。
コンソーシアム側は「応札者はいずれも必要な条件を満たしておらず、入札を無効にする」と通知した。なお、今回計画されていたケーブルは、敷設済みの別のケーブルを介して米グアムにもつなる計画にもなっていた。
海底ケーブルは中継器や陸揚げ拠点などで通信データを抜き取ったり、場合によっては遮断することも技術的には可能だ。これを前提とした場合に、中国企業が絡むのは当然避けるべきことになる。日米豪は中国企業の受注を安全保障上の見地から警戒し、事業を進める3カ国や、事業資金の貸し出しを行う世銀に対して入札の見直しを申し入れていた。そしてこれが実った形だ。
そもそもこの事業は中国の通信大手の中国電信などに技術を依存する前提だったのだが、コンソーシアム側は政府の懸念に対応する形でシステムを再設計するとしており、中国企業が絡む形を排除する意向のようだ。3カ国は今後こうした前提のもとに再入札に踏み切る公算が大きいと見られている。
太平洋の島嶼国の中では、近年中国の影響力の増大が指摘されていた。例えば、今回の事業計画に関わる国の1つであるキリバスは、2019年に国交の相手を台湾から中国に切り替えていたことでも知られる。
だが、トレンドは明らかに変わった。この1〜2年で対中警戒網が大きく広がり、世界の国々の中国との付き合い方が大きく変容している。それを象徴する出来事ではないだろうか。
今後さらに中国への締め付けが強化されていくであろう。また中国側に対外工作を行う経済力が今後失われていく中で、この点から掌返しに動く国も増えていくことも予想される。
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太平洋島嶼国の光ケーブル計画の画像
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