武漢市の周先旺市長は1月27日、中国国営中央テレビ(CCTV)の取材に対して、「地方政府は情報を得た後、まずそれを公開する権限を(中央政府から)受けなければならない」と述べ、新型コロナウイルスの感染情報を直ちに市民に公開しなかったのは、習近平政権の側に問題があったからだとほのめかした。
武漢市の公式サイトの「漢網」も2月12日に、「感染が発生した12月に、武漢市は早くも国家衛生部門に報告し、専門家チームが武漢市に来て調査を行った。市長は医学出身ではないので、専門家の意見に従っただけ。どこが間違っていたと言えるのか?」と、周市長を擁護した。
在米の中国の反体制派の経済学者の何清漣氏は、バックに誰かがいなければ、周先旺氏が公然と最高指導者(習近平氏)に責任を押し付けられるものではないことを指摘している。
これに対して、習近平国家主席側も黙っているわけにはいかない。
党機関誌「求是」は、習主席が1月7日と20日、武漢市で発生した新型肺炎に関して感染拡大防止の指示などを行っていたとし、2月3日の中央政治局常務委員会会議においても習主席はそのことを確認する発言をしている、と反論している。
つまり、1月7日の段階で、習主席は感染拡大に必要な行動を取るように指示していたのであり、その指示をサボタージュして実施しなかったのが周市長だと主張しているわけだ。
だがこの中央政治局常務委員会会議については、新華社が会議の内容を割と詳しくまとめたプレスリリースを出しているが、このプレスリリースには、習主席の主張を裏付けるような内容がまったく記載されていないのだ。
このことを遠藤誉氏は指摘した。
プレスリリースには、武漢市の対策が重要だというのはもちろん書かれているが、1月7日と20日に習主席が武漢対策の指示を出したという話は載っていないのだ。
さらに、1月7日に開催された中央政治局常務委員会会議のプレスリリースには、各所から活動報告を聞いたことは書かれているが、武漢や新型コロナウイルスのことには一言も触れられていない。
習主席はその後、1月17〜18日の日程でミャンマーを訪問し、さらに19日〜21日に雲南省を視察している。
つまり、習主席は少なくともこの頃までは、この問題に真正面から取り組む積極姿勢は見せていなかったと考えられるわけだ。
つまり「求是」に掲載した習主席の主張は、虚偽である可能性が極めて高いと言わざるをえないのである。
習主席は反習近平派に完全に追い詰められている。
失脚目前だと言ってもいいだろう。
この段階に至っては、習近平国家主席のごきげんを取るようなことをやっても、ポスト習近平を狙う勢力からは歓迎されない。
むしろ、習主席のはしごを外すような政策を実行したほうが、その後の中国との関係ではむしろよいということになるだろう。
すなわち、中国からの入国禁止と習近平国家主席の国賓訪日の取りやめを日本政府が決めたほうが、今後の日中関係に良好に作用するというわけだ。
安倍政権はそのあたりが全く読めていないのだろう。
実に残念だ。
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