ダイヤモンド・プリンセス号が、乗客・乗員の下船が許されることなく、今なお横浜港に停泊されているのかの経緯を簡単に振り返ってみよう。
ことの発端は、香港在住の80歳の男性が、帰国後に新型コロナウイルスに感染していたことがわかったことだった。
この男性は、船に乗り込む前日から咳が出始め、帰国後の30日に発熱の症状が出て、検査を受けた結果として感染が確認された。
この男性がダイヤモンド・プリンセス号を利用していたことから大騒動に発展し、今の事態に至っているというわけだ。
この男性は、乗船時も下船時も、1)発熱(37.5度以上)がある、2)咳などの呼吸器症状がある、3)発症前14日以内に湖北省への渡航歴がある、4)発症前14日以内に湖北省への渡航歴のある人との濃厚接触がある、という厚労省が示す条件では、満たしていたのは2)のみであり、発熱も湖北省への渡航歴も渡航歴のある人との濃厚接触もなかった。
今回この香港の男性の感染が発覚したのは、香港の医療機関が、発症前14日以内の湖北省への渡航歴とかを問題にせずに新型コロナウイルスの検査を行ったからである。
もし仮に香港の医療機関が、日本と同じ基準で新型コロナウイルスの検査を行うかどうかを決めていたとすれば、香港でもこの男性は、新型コロナウイルスへの感染は見過ごされていたことになる。
もし見過ごされていれば、70人の感染者の大半が、大手を振って日本国内に入っていたわけだ。
とすれば、日本国内ではすでにこのような見過ごしがいくつも発生していて、それによる感染が静かに広がっていることは、疑いようのないところだ。
だが、初期症状は風邪と変わらないので、感染している当人は大抵気づいていないだろう。
そもそも自分が新型コロナウイルスに感染したかもしれないと思っても、厚労省の基準を満たさないので、検査を受けることもできない。
医師が症例的に考えて、新型コロナウイルスの感染を疑っても、厚労省の条件を満たさなければ、「風邪」としか扱われず、検査すら行えないのが実際だ。
政府は、日本には特殊な例を除いてはまだ新型コロナウイルスは入ってきていないという前提を、どうしても崩したくないのだろう。
この期に及んで、どうしてそこまで中国に忖度するのだろうか。
フェーズはすでに水際対策の段階をとっくに過ぎている。
国内の実情に合わせれば、国内感染がすでに広がり始めていることを前提としたフェーズに切り替えなけれならないのに、建前にとらわれて動けないのだ。
中国を大切にして、日本国民の命を犠牲にするのは、もうやめよう。
繰り返すが、もうそういう段階ではないのだ。
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