新型コロナウイルスによる世界的な経済危機は、発展途上国に特に多大な負担を与えている。
IMFと世界銀行は、発展途上国に向けた貸出債権の元利払いを一時停止することを要請し、これに対して中国を含むG20諸国は合意した。
発展途上国が資金繰りの厳しさからさらなる貸出を求めることにも、西側諸国は応じる姿勢を見せているが、それでも、こうした追加貸出が中国の債権回収の手段とされて、中国が一方的に利するようになってはたまらないので、釘を刺しているわけだ。
中国の貸出は透明性がなく、どのような条件でいくら貸し出しているのかが、わからない状態だ。
従って、不透明なやり取りの中で、不透明な条件が様々に提案されているのではないかという疑心暗鬼は、西側では強い。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国がザンビアに対して、債務返済の繰延とか債務放棄に対価として、ザンビア国内にある銅山を担保としてよこせと要求していると報じた。
これは中国との交渉を行っているザンビアの高官2人から確認したとの情報だ。
これに対して、ザンビアのンガンドゥ財務大臣は、中国と債務の繰延交渉を行っていることは認めながらも、この報道を否定し、このような話はザンビアの側からも中国の側からも一切出ていないと述べている。
だが、ザンビア政府は4月15日に、この話の中に具体名として取り上げられたモパニ銅山の操業ライセンスの停止を予定していると述べている。
このモパニ銅山は政府が運営しているものではなく、ロンドンに上場しているグレンコアPLCという会社が運営しているものだ。
ザンビア政府がこの会社からライセンスを取り上げて、中国に譲り渡そうとしているのではないかと考えると、辻褄が合う動きとなる。
それだけに、ンガンドゥ財務大臣の発言はそのまま素直には受け取れないわけだ。
ただ、中国との交渉に当たっている高官2人とンガンドゥ財務大臣が裏で示し合わせて、中国の動きを潰すのに動いていると考えると、辻褄が合う。
すなわち、中国を相手とする交渉の席では中国に対して弱い立場にいるので、鉱山ライセンスの中国への譲渡を拒否するような主張はできにくいが、この話を潰すために一方では情報をリークしながら、他方ではとぼけてみせたのではないかというわけだ。
G20での合意事項に反する要求は、中国政府からは行われていないと主張することで、中国側のメンツを立てつつ、中国側の無茶な要求をかわす動きに出たのではないかと推察できるわけだ。
もっとも真相は藪の中であり、これは単なる邪推であるかもしれない。
それでも、スリランカのハンバントタ港の運営権が99年間中国に引き渡されたこともあり、中国による「債務の罠」の作動が疑われるのも致し方ないところもあるだろう。
中国とザンビアとの間がどのような形で最終的に決着するかは、中国から巨額の資金を借りている他の国々にとっても、関心は高いだろう。
日本政府は、こうした国々に対して、財務のアドバイザーを派遣するような支援を行えないものだろうか。
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