経済

脱炭素化について真剣に考えよう!(松尾 利昭)


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今回の記事は「朝香 豊」の記事ではなく、「松尾 利昭」さんの記事です。ご応募いただき、採用させてもらいました。このブログで記事を載せたいという方がいましたら、ぜひご応募ください。自分の意見と相容れない人を小バカにするもの、論理の飛躍があるものなどは載せることはできませんが、そういう点で一定以上に達している記事であれば、ここで喜んで掲載させてもらいます。ご応募をお待ちしています。

視聴された方もおられると思うが、5月14日NHKの『首都圏情報 ネタドリ! 「“伝えて!NHK” 若者と考える気候危機」』が報道された。この運動は、ヨ―ロッパの若者の運動に刺激されて昨年9月渋谷のNHK前で、高校生がNHKに気候変動の報道を要望したのが始まりである。その後、高校生、大学生とNHKは共同で環境問題について動画作りを行った。

若者たちはすぐにオンラインで小泉環境相や河野義博参議院議員と面会するなど素晴らしい行動力を示した。しかし若さゆえに与えられた情報を信じて疑わない姿勢に危うさを感じた。後に述べるように、気候変動問題は特に日本にとって存亡に関わる重要問題である。まさに自分たちの将来に関わる問題の真実を知り行動してもらいたい。

まず、地球温暖化の原因としてCO₂が上げられているが、高校の理科を勉強した人は、ppmオ―ダのCO₂(ここ100年ほどで大気中のCO2濃度が0.03%から0.04%に、0.01%分程度上昇した)が気温の変化の主要因にならないことは容易に理解できるであろう。

地球の気温は主として宇宙線―太陽―雲に支配され、他に水蒸気、CO₂、メタンなどの温室効果ガス及び地磁気によって少し影響される。温室効果ガスの影響は90%以上が水蒸気で、CO₂の影響は10%以下である。

次に、地球は46億年前に誕生以来、大きな波の氷河期、間氷期、その間の中程度の氷期、間氷期、その間のさらに小さい氷期、間氷期を繰り返してきたことが地球史の研究で分かっている。

現在は大きな波は3400万年から新生代後期氷期時代にある。中程度の波では、40万年前から氷期、間氷期を繰り返して、間氷期の温度の高い状態にある。最近の140年間は、1820年に終わった小氷期からの回復期で、これから寒冷化が始まり、2035年頃最低値になると予想されている。

国の研究機関による温室実験では、2度程度の温度上昇では米や小麦の収穫量は増加した。CO₂の上昇も同様である。2030年に温度上昇を1.5度以下に押さえることはあまり意味がないことが分かる。

テレビでは北極の氷の崩壊や台風の映像が繰り返し写し出されるが、これらの印象操作に惑わされてはならない。極地の氷は地球の極端な温暖化や寒冷化を防ぐ役割を果たし、産経新聞の調査によると台風は1900年以降、強度も日本への上陸数も変わっていない。

次は少し理解しにくい面はあると思うが、気候危機は環境運動家が、国連、政府機関、マスコミなどを巻き込んで、利権を伸長するためにつくり出したものである。新興宗教みたいなものである。私は21世紀の天動説と呼んでいる。

CO2排出量の問題は実は科学というより、政治の産物の要素が強いことに気がつきたいものだ。共和党のトランプ大統領はCOP25を脱退したが、民主党のがバイデン大統領はすぐ再加入し、4月22日には気候変動サミットを開催した。日本は具体的な方策がないまま、30年の削減目標を従来の26%から46%に大幅に上方修正した。これに対して海外の活動家は、もっと削減幅を増やし、62%削減が必要だと言っている。

現在の日本のCO₂排出量は世界の3%余りに過ぎない。これに対して中国は28%ほどを占める圧倒的世界一のCO₂排出国である。中国は2030年までにCO₂排出量のピークを迎えるようにするとは言っているが、排出削減を表明してはいない。それなのに、なぜか環境活動家はこの中国に対してはほとんど何も言っていないに等しい。しかも中国は環境問題の取り組みの先進国であるかのような報道すらなされている。これは公正な扱いなのだろうか。

最後に日本の温室効果ガス削減の影響を考えよう。

まず日本のCO₂排出量の約4割を占める電力について考える。2017年度の電源構成は、石炭32%、LNG40%、石油9%、原子力3%、再生可能エネルギー16%(水力を含む)である。

太陽光発電については政府が強引に普及を進めた結果、現在国民は年間⒉4兆円の負担を強いられている。これだけ負担して地球温暖化の抑制効果はどの程度であったのか。「気候変動に関する政府間パネル」の第三次報告書通りの温暖化効果がCO2にあったとしても、0.000087℃にとどまる計算になる。経産省は2030年にはこの負担増は⒋9兆円になると発表した。風力発電については欧州の増強に遅れじと、経産省は2040年に現在の2250倍に相当する4500万kWに増強する計画を発表した。

再生エネルギーを増やしても、太陽も照らず風もほとんど吹かない時もあるから、こうした時に動かせる火力などのバックアップ電源は残さざるをえない。日頃は利用しないこうした発電施設を温存しなければならないわけだが、こうした非効率によっても電気代は跳ね上がることになる。

環境活動家はCO2の排出量が多いとして石炭火力を非難する。だが、石炭火力は低開発国にとっては最も重要な電源であり、エネルギーの転換効率が70%にも達する最新式の日本の石炭火力が普及すれば、世界のCO2削減に大いに貢献する。だが日本は国際的な非難に負けて石炭火力を断念する方針を示した。この中で中国が石炭火力を今後も製造するほぼ唯一の国となった。現在世界で建設予定のある石炭火力発電の90%は中国である。

製鉄業も石炭に代わる水素やアンモニアによる製鉄を検討しているが、技術開発はこれからである。日本製鉄はこのための技術投資は少なく見ても5000億円は必要だと見ている。これだけの投資を行っても石炭を使うよりも効率的に生産できることはなく、最終的な製品価格は上昇せざるをえない。

トヨタ自動車の豊田社長は、現在の脱炭素計画が実行されれば日本では自動車の生産は出来なくなると述べている。現在の日本の産業の中で、自動車、機械、化学などの製造業の割合は2割だが、外貨を稼ぐ輸出の主力産業であるのは言うまでもない。製造業の輸出競争力がなくなれば、日本の外貨獲得能力は大きく落ち込むことになる。

可能性はただ一つ、原発の再稼働及び新型原発の開発、建設である。原発については国民の反対は根強いが、日本の滅亡を防ぐためにはやらざるをえない。原発の中には非常時に自然に停止して暴走することが絶対起こりえないようなものも開発されている。こうした技術を無視してさらなる発展の可能性を現段階で摘むことは愚かだとは思わないか。

アメリカではベンチャー企業が次世代原発の開発を行っている。世界の指導者は原発の原発の重要性を認識し、増強を進めている。

若い人たちには、気候問題に対する取り組みは自分たちの課題であり、その結果は自分たちが受けざるをえないことを認識して、積極的に勉強してもらいたいと思う。
  
 
 
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