世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアは、自主的な減産を取りやめ、石油増産に転じる方針を示した。
原油価格(WTI)は1バーレルあたり50ドル〜60ドルのレンジで、この1年間はほぼ動いてきたが、サウジアラビアの方針転換を受けて、一気に30ドル前後にまで下がってきた。
今後20ドル近くまで下がるかもしれないとの憶測も出ているが、サウジアラビアがそこまで自滅的な行動をするのかどうかは、自分には疑問だ。
そういう噂を流すことで、サウジアラビアはまとめにくい交渉をまとめる力にしたいのではないかと考える。
上記の話はわかりにくいかと思うので、もう少し具体的に説明してみることにする。
サウジアラビアの最大生産量は日量1200万バレルだが、現在は970万バレル程度に減産している。
これを4月には日量1000万バレル程度まで引き上げる予定だ。
サウジアラビアの増産決定は、産油国内の減産交渉がロシアの反対でまとまらなかったことを受けての処置だ。
原油価格が下がっている中で、生産量まで落とすことになったら、原油生産に依拠している石油生産国の懐事情には非常に厳しい状況になる。
だからこれまでも、石油価格を維持するためには減産が必要だとはわかっていても、減産で合意するのは難しい側面があった。
全体のまとまりが悪い中で、最大の産油国であるサウジアラビアが大きく妥協することで、何とかまとめることが多かったのだ。
ロシアとしては、減産を拒絶しても、サウジアラビアがさらなる減産を受け入れるに違いないと読んでいたのかもしれない。
だが、そうだとしたら、ロシアとしてはあてが外れたということになるだろう。
さて、従来の産油国は、アメリカのシェールオイルの生産によって大きな経済的な打撃を被った。
世界の石油供給量が増えたことで、需給関係のバランスが崩れたためである。
シェールオイルは年々産出量が増えていて、その増え方は石油の需給バランスの観点から見て、とても無視できる量ではない。
今やアメリカでは、従来型の石油が日量400万バレル、シェールオイルが日量900万バレル程度の生産で、合計で日量1300万バレルの生産となっている。
これはサウジアラビアの生産量を遥かに上回る、現在世界最大の石油生産量だ。
シェールオイルだけで、サウジアラビアの生産量にかなり切迫しているくらいだ。
ただし、アメリカのシェールオイル生産は、損益分岐点が45ドル〜50ドルのところが多いとされている。
したがって、30ドル台の取引価格が維持されると、生産が非常に厳しくならざるをえない。
今年の生産予定分については、価格低下を吸収するヘッジが概ねできているが、来年の生産予定分については、当然ながら、ヘッジはあまり進んでいない。
だから、来年分については今後の石油価格を前提に取引が進むため、低価格が維持されると、アメリカのシェールオイル業者にはとても受け入れられない事態が進行することになる。
この結果、サウジアラビアが今後も増産傾向だというメッセージを与えれば、原油価格が上がる方向には向かいにくいから、アメリカのシェールオイル業者には、とても看過できないものになる。
これはロシアを含めた他の産油国にしても同様だ。
こうしたショック療法で、ロシアにも減産合意に引き戻す力とするのと同時に、減産の話し合いから外れているアメリカにも、減産交渉に加わるようにとの圧力をかけたいということではないかと考えている。
サウジアラビアの動きを受けての米露の動きが注目される。
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