香港の「国家安全維持法」の内容が概ね決まった。
この「国家安全維持法」により、中央政府から「国家安全維持公署」という香港への出先機関が作られ、ここが香港の治安維持を行うことになる。
この「国家安全維持公署」というのは「第二の警察組織」と考えればいい。
一般的な犯罪は従来の香港警察だけで対応するが、「極めて少数の案件」の「特定の状態」については、「国家安全維持公署」が対応するとしている。
ただ、「国家安全維持公署」が、国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託という4項目についての取締りを名目としていることを考えると、自由と民主主義を求める運動は取締りの対象になると考えるべきだろう。
自由と民主主義を求める運動は、中国の基本体制と相容れないわけだから、これを「国家分裂」だと規定することができるからだ。
この「国家安全維持法」は、その法解釈は全国人民代表大会の常務委員会が最終的な権限を持つとされるので、中央政府の考え1つで法解釈は何とでもなるわけだ。
中国本土では、習近平総書記を揶揄して「習肉まん」と口にしただけで懲役3年になった例があるが、このレベルのことで「政権転覆を謀った」とされる国が法解釈を行うということを頭に入れておくべきだ。
さて、拘束された容疑者は、裁判を経て罪刑が確定することになるわけだが、普通に裁判を行うと「無罪」判決が出る可能性もある。
そこで、「国家安全維持公署」が拘束した「容疑者」については、香港行政長官が任命した裁判官しか審理を担当できないことにした。
つまり、政府の意のままに動く裁判官が審理を担当するということになり、司法の独立など全くなくなることを意味する。
香港は独立した警察権も裁判権も失うことになるわけだ。
そもそも「国家安全維持法」は中央政府が作っているものだから、香港の立法会(議会)にはこれを改廃する権利はない。
それどころではなく、この「国家安全維持法」に抵触する法律を立法会が作ったとしても、「無効」ということになってしまう。
これにより、香港の立法権も中央政府から独立したものとは言えなくなってしまう。
そもそも「国家安全維持法」は、香港の憲法といえる「香港基本法」よりも優先されるとされており、「香港基本法」が規定する言論の自由、報道の自由、集会の自由などは、完全に有名無実なものとなる。
アメリカで起きている「黒人の命は大切」(BLM : Black Lives Matter)運動による大混乱は、香港に対して本来注がれるはずの厳しい目を逸らす役割を果たしているように感じる。
香港を忘れてはならない。
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