岸田総理の所信表明演説の経済分野の内容は私は大いに評価するが、対中姿勢では腰が引けている印象である。
中国は台湾に対して高い軍事的プレッシャーをかけ、我が国の尖閣諸島への圧迫もエスカレートしており、その覇権主義的な姿勢をどんどん強めている。この中国に対して毅然とした姿勢を見せたとは残念ながら思えなかった。
岸田氏は習近平総書記との電話会談においても、かなり腰が引けた対応を行ったのは間違いない。
日本側の報道では全く出ていないが、中国側の報道では「両国関係の歴史から重要な啓発をくみ取ると同時に、来年の国交正常化50周年を契機に、新たな時代の要求に満ちた建設的かつ安定した両国関係の構築に向けて努力していく」と岸田総理が語ったことが掲載されている。
「重要な啓発」とは何だろうか。日本が中国を侵略をして迷惑をかけたということなのか。中国から進んだ文物を頂いてきたことに感謝するということなのか。いずれにせよ覇権主義的傾向を強める中国の危険な動きを止めることには繋がらない話であるのは間違いない。
また、人権がなく、覇権主義的行動をどんどんエスカレートさせ、知的財産権の窃取を国家として追求している国家との「国交正常化50周年」を祝う対象にすることができるのか。中国による知的財産権の侵害への批判も行わずに、「建設的かつ安定した両国関係の構築」などありえないだろう。
岸田総理はさらに、引き続き中国側と連携して、経済協力と民間交流を強化すると共に、新型コロナウイルス感染対策や気候変動など、重要な国際と地域の問題において緊密な協力と交流を進めていきたいとの姿勢を示した。
今の中国との間では「経済協力と民間交流を強化」してはダメではないのか。経済安全保障の観点からも問題であろう。
さらに習近平総書記が、来年2月に行なわれる北京冬季五輪への日本の積極的な参加に歓迎の意を示したことも記されている。当然この発言の前提は、日本が北京冬季五輪に積極的に参加するとの意思を岸田総理が伝えたということになる。
岸田総理の頭の中は、香港やウイグルやチベットの話はどうなっているのだろうか。
岸田総理は中国との揉め事を好まない日本の財界に配慮したつもりなのだろうが、それは戦略的な大間違いである。日本の民間企業が中国から撤退しようとしても、今の状態では個別企業が勇気を振るわないと撤退できない状況である。政府の方から撤退しやすい環境を作ってやらないと、個別企業が却って苦しむことになる。
こうした日本の対応とまさに真逆の対応をオーストラリアは行った。
オーストラリアのアボット元首相が台湾を訪問したのである。アボット元首相は台湾が国際的な孤立状態を解消することを支援するとし、中国の「挑戦」に直面している台湾への支持を表明し、民主主義国家は団結すべきだと語った。
アボット元首相が訪台したのは、当然ながらモリソン首相の意向を受けてのことだろう。日本に置き換えれば、岸田氏が安倍元総理に訪台してくれと依頼するような話である。
対中姿勢で日豪には大きな差がついてしまったと言わざるをえない。実に残念である。
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岸田・習近平の画像
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