人権・民主主義

民主主義ではない共産党と連合は相容れない! 連合の芳野会長の指摘はその通り!(朝香 豊)


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連合の芳野友子会長は産経新聞のインタビューで「労働組合と共産が戦ってきた経緯がある。労組は職場の声を聞き、民主的手続きにのっとって機関決定し、運動を展開していくボトムアップ型だ。共産は指導部が決めたことを下におろしていくトップダウン型で、民主主義のわれわれと共産の考え方は真逆の方向を向いている」と答え、連合と共産党は相容れない考えを改めて示した。

これに対して共産党の志位和夫委員長は共産党について「党運営も民主主義を大事にしている。民主主義の党ではないとおっしゃるのであれば全く違う。事実と異なると申し上げておきたい」とした上で、「労働運動のナショナルセンターである連合の責任者が公党に対して非難をする以上、根拠を示す必要がある」と述べ、芳野友子会長に不快感を示した。

さて共産主義政党は「民主集中制」という組織原則を採用しているのはよく知られているが、この組織原則は1906年にロシア社会民主労働党の組織原則として採択されたのを起源とするものだ。支部の段階で民主的討議を経た上で代表者を選んで上の機関に持ち上げ、その機関で討議されたことがさらにその上の機関に持ち上がっていくという中で党としての最終的な意思決定を決め、その意思決定に党全体が拘束されるというのがその仕組みである。ロシア社会民主労働党はメンシェビキ(「少数派」の意味の党内右派)とボルシェビキ(「多数派」の意味の党内左派)に分裂していたが、両者ともにこの組織原則を認めて統合したのである。

なお、共産主義政党が「民主集中制」を採用するのは、資本家側から仕掛けられてくる分裂工作に対抗するためには、党を一枚岩に保つことが重要であるとの考えがその背景にある。

ただその具体的なあり方には実際には幅がある。1906年にロシア社会民主労働党で採択された時には、1)党の役員は選挙によって選出されるべきこと、2)一度選ばれても問題があれば更迭されうること、3)党の機関は活動を定期的および随時に報告しなければならないことなども認められていた。

さて名前とは裏腹に、実際には「少数派」の意味のメンシェビキの方が多数派で「多数派」の意味のボルシェビキの方が少数派であったから、メンシェビキが打ち出す方針の方が党の方針として採用されることが一般的であった。これに対して不満を持ったのがレーニンを代表とするボルシェビキで、党大会での決定を繰り返し批判した。レーニンは「批判の自由と行動の統一」という論文を書き、自分たちの活動を正当化していた。メンシェビキとボルシェビキの根深い対立は「民主集中制」の原則に違反するボルシェビキの姿勢が導いていた側面もあることは知っておきたい。

さてロシア革命をクーデターまがいの謀略で権力を掌握したボルシェビキは、民主集中制の考えをすっかり改めた。ロシア革命時から内戦に突入していたこともあり、軍事的な規律を優先することを当然の前提とする考えを打ち出したのである。上級機関のすべての決定を下級機関は絶対的に受け入れることが当然視され、党中央と違う考えを「分派」として徹底的に嫌う姿勢に転換した。かつては自分たちが「分派活動」をやっていて、それを理論的に正当化することまで行っていたのに、真逆の方針に転換したのである。そしてこれ以降の共産党の組織原則は、このボルシェビキ型の「民主集中制」が当然だとされるようになった。そしてこれがスターリンによる粛清などに利用されるようになったのは歴史が教えるところである。

さて、このボルシェビキ型の「民主集中制」は日本共産党にも引き継がれている。このことを典型的に示しているのが1985年に起こった伊里一智(いさとかずとも)の事件である。宮本賢治路線が共産党の低迷を招いていると考えた伊里一智(東京大学大学院に所属)は中央委員会に対する批判を行った。共産党の東京都大会の代議員として自らが選ばれるように東大の大学院の他の支部にも働きかけ、6割の支持を集める中で東京都大会の代議員として選出された。(ちなみに「伊里一智」はペンネームで、「イリイッチ・レーニン」の「イリイッチ」のもじりである。)

だが共産党は他の支部に働きかけたこの行為を「分派活動」だとして、伊里一智の代議員資格を認めなかった。なお、この時に伊里一智の動きを封じるのに先頭に立って動いたのが、当時共産党中央委員会青年学生対策委員であった志位和夫である。

さて、現在日本共産党が採用しているのは、1906年にロシア社会民主労働党の組織原則として採択されたタイプの「民主集中制」ではなく、ボルシェビキ型の軍事組織的な「民主集中制」である。この形態は党中央に権限が集中し、党中央が腐敗したとしてもチェック機能は働かない。既に権力を掌握した側にはすこぶる都合のいいものである。

1990年の党大会で35歳という若さで志位和夫が共産党の書記局長の候補として紹介された時、会場はどよめきに包まれた。会場にいたメンバーのほとんどは35歳の志位和夫が書記局長の候補となっていることを事前に知らされていなかったからである。日本共産党には選挙によって役員を選出するという文化は全くない。

連合の芳野会長が批判する共産党の持つトップダウン型の性質は、このボルシェビキ型の「民主集中制」によるものである。ボルシェビキ型の「民主集中制」からの完全なる脱却を打ち出さない限り、共産党が民主主義政党として機能することは断じてないことは間違いないだろう。

 
 
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産経新聞の記事
https://www.sankei.com/article/20211216-62QIODR7VJNTXI4SXEOIQQ2XRQ/
志位和夫の画像
https://img.sirabee.com/wp-content/uploads/2020/01/sirabee20200108shiikazuo-600×400.jpg

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