経済

習近平は世界経済も崩壊させる! 笑ってはいられない!(朝香 豊)


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中国の不動産バブル崩壊は、地方政府の財政にも大きな影響を与えている。

中国財政部の資料によれば、2020年の地方政府の土地売却収入は8.4兆元(150兆円)という巨額に達しているが、これは地方政府の収入の84%に達する巨額なものである。

つまりバブルが崩壊して土地売却が全くできなくなれば、地方政府は収入の84%が消えることになる。仮に土地売却収入が1割減るだけでも、大きな打撃があるのは理解できるだろう。そして実際にそれにつながる動きが出ている。

天津と瀋陽では土地売却の公開入札に応じた民間企業はゼロとなった。落札は一応されたが、落札したのはすべてが国有企業である。

不動産デベロッパーが開発用地を積極的に取得しようとするのは、不動産デベロッパーの資金調達環境が安定していて、住宅価格が今後上昇が見込まれる場合だろう。だが、この両条件は現在ともに崩れている。

不動産デベロッパーの資金調達は当局の厳しい規制によって前年比で50%以上減少している。つまり資金調達環境は最悪の状況になっている。そして習近平政権は不動産価格を大幅に引き下げることを真面目に考えている。

中国の不動産バブル崩壊は軟着陸すると大真面目に考えているエコノミストが未だに多いのは驚きだが、一体何を見ているのだろうか。

習近平は経済を壊すことを何とも思っていないことにどうして気づけないのか。「そんな破壊的なことをやるはずがない」との「常識」が邪魔をするのかもしれないが、現実をよく見るべきだ。

例えば突然学習塾禁止令が打ち出された。これによって1000万人が失業しているのだが、習近平は全く意に介していない。この禁止令は「家政婦」を名目とした家庭教師も許さないで摘発する方針が示されるほど徹底している。

アリババ、テンセント、滴滴(ディディ)、美団(メイトゥアン)などのIT企業に対する常軌を逸した締め付けもみんな見ている通りである。

深刻な電力不足を生み出すような石炭採掘規制を突然強力に打ち出したりもする。

仮にこれら全部をどうしてもやりたいと思っても、普通の感覚ならタイミングを考えて一つ一つ別々に扱うだろう。

なぜ同時なのか。習近平がいくら経済のことがよくわかっていないとしても、これらを全て一気にやればどれほど凄まじい事態が生じるかの想像もできないわけではないだろう。

発想を完全に切り替える必要がある。習近平はむしろ意図的に経済を強力に崩壊させている。それによって反習近平派の経済利権を根こそぎ潰しにかかっている。混乱の中で粛清を強化し、自分に逆らう勢力を潰す機会として利用する。このノウハウを毛沢東から学んで実践していると見るべきなのである。

民間企業が立ち行かなくなれば、全部国家で接収すればいい。自分が目指す完全なる社会主義化にはむしろ好都合だとしか思っていないのだろう。

私は「それでも習近平が中国経済を崩壊させる」を今年の3月に出版したが、習近平が崩壊させるのは中国経済だけにとどまらない。

西側経済に大ダメージを負わせ、西側の体制を動揺させようとしている。

半導体の原料のシリコンの生産が止まったらどうなるだろうか。シリコンなんてどこにでもあると言われても、精錬工場は電力の安い中国に集中してきた。中国以外に精錬工場を建設するにしても、相当な時間がかかるだろう。シリコンの代替品の開発が可能だと言っても、それならさらに時間がかかるだろう。これだけで西側の経済を潰すことができるのではないか。

中国が世界の工場になっているから、「あれがない」「これがない」ということがどんどん起これば、西側のサプライチェーンにも重大な影響が及ぼされることになるだろう。

民主主義国家が小さな損失にも国内世論が右往左往することを習近平は理解している。笑ってはいられないのである。

 
 
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